説明

磁気共鳴画像法および薬物送達のためのポリビオチン化合物

本発明は一般的に、イメージング剤およびドラッグデリバリー剤として有用なビオチン含有化合物に関する。本発明の別の局面は、金属原子にキレート化した上記化合物に関する。好ましい態様において、金属原子は、ガドリニウムである。本発明の別の局面は、3つのビオチン部分と複素環式のコアに共有結合した薬剤とを含む化合物に関する。いくつかの態様において、薬剤は、抗生物質、抗ウイルス物質、または放射性核種である。本発明の別の局面は、本発明の化合物を哺乳動物に投与することを含む、疾患を治療するための方法に関する。本発明の別の局面は、本発明の化合物を用いて磁気共鳴画像を得ることに関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2003年10月2日に出願された米国仮特許出願第60/508,152号の優先権を主張する。これらの出願の内容全体を本明細書中に引用によって援用する。
【発明の背景】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)は、臨床の現場で主に用いられている撮像技術であり、それは、内部の臓器および組織の非常に鮮明で詳細な画像を作成する。これらの画像は、他のスキャン技術よりはるかに詳細である。MRIは、ヒトの体の薄いスライスの画像を作成するだけの断層撮影法として始まったが、MRIは、これを進歩させ、容積撮像技術となった。MRIを用いて得た画像の質は、MRI試験の前に造影剤を静脈投与することによって高めることができる。造影剤は、特定の臓器や組織のシグナルレベルをその周辺のシグナルレベルより上昇させることによって、その特定の臓器や組織を視覚化することができる。
【0003】
磁気共鳴画像法の重要な応用の1つは、腫瘍の視覚化である。高品質の腫瘍画像を得るためのアプローチの1つは、腫瘍細胞と結合する抗体を使用することに関する。この技法の1つの変形例においては、非放射標識抗体が、投与され、位置が確認され、予め標的としておいた抗体に対して高いアフィニティを持つ低分子量の放射標識物質を追跡する循環から離れる(Paganelli, G. et al.,
J. Nucl. Med Comm. 12:211-234 (1991); Green, NM Biochem. J. 89:585-91 (1963); Hnatowich DJ et al., J. Nucl.
Med. 28:1294-1302 (1987))。腫瘍の画像化においては、アビジン、すなわち、卵白に見られるカチオン性の糖タンパク質が、天然に存在するビタミンであるビオチンと組み合わせて用いられてきた。アビジンは、ビオチンに対して非常に高いアフィニティーを持ち、4つのビオチン分子を結合し、アビジン−ビオチン複合体を作成することが可能である(Kd=10.sup.−15M)。
【0004】
アビジン−ビオチン系で腫瘍を標的化するための2つの基本的なアプローチが患者および動物に適用されてきた。第1の方法においては、アビジン(またはストレプトアビジン)−接合抗体を注射し、数日後、抗体−腫瘍結合が最大になったとき、放射性ビオチン誘導体を注射し、腫瘍の位置を突き止める。残念ながら、未結合の抗体が血液から完全に除去されていない場合、標的部位の視覚化が曖昧になりうる。第2の方法においては、3日後、冷アビジンによってビオチン化された抗体を注射することによって、背景の血液が減少する。得られた循環する、ビオチン化された抗体−アビジン複合体を肝臓近くの血液から隔離する。次いで、腫瘍において既に位置が突き止められている抗体−ビオチン−アビジン複合体を結合する放射性ビオチンを注射する。しかしながら、「予め標的化する」ステップを採用することによって、腫瘍を標的化するための双方のアプローチは、被験者に数日間のクールの多数の処置を受けることを要求するものである。Morrelらの研究によれば、大腸菌感染したラットモデルにおける、In−111標識されたIgGおよびヒト血清アルブミン(HSA)の取り込みが報告されている。双方の標識タンパク質の蓄積は、感染症部位の明らかな画像を作成するのに十分なものであることがわかった(Morrel, EM et al., J.
Nucl. Med. 30:1538-1545 (1989)。さらに、現時点でのビオチン−アビジン系は、標的の濃縮が遅く、準最適標的と非標的結合との結合率に問題があり、コントラストと解像度の悪さにより、高品質の画像を得ることが妨げられている。したがって、腫瘍組織と高い特異性で結合し、高品質の画像を作成する強いイメージング剤が必要である。
【0005】
癌や他の疾患をよりよく治療するために高品質の画像を得ることに加えて、疾患からの回復がうまくいくためには、通常、治療薬を用いて患者を治療することが必要である。薬学的化合物の投与の、特に問題となる局面は、化合物を、患者の所望の組織に送達することである。これは、放射性核種の投与による癌組織の治療に特に言えることである。放射性核種は、細胞を死に至らしめる放射能を放出することによって機能する。したがって、放射性核種は、健康な組織に該を及ぼすことなく、癌組織に対して迅速かつ特異的に送達される必要がある。この必要性に答えて、薬物を罹患組織に安全に送達するための多くの方法および物質が開発されてきた。しかしながら、薬剤を高い選択性をもって罹患組織に送達するために、この必要性は未だ存在する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は一般的に、イメージング剤およびドラッグデリバリー剤として有用なビオチン含有化合物に関する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、3または4個のビオチン部分が付着した複素環式コアを含む。好ましい態様においては、4個のビオチン部分が付着した12員環を含む複素環式コアを含む。いくつかの態様において、ビオチン部分は、アミド結合を含むテザーによってコアに付着している。本発明の別の局面は、金属原子にキレート化した上記化合物に関する。好ましい態様において、金属原子は、ガドリニウムである。本発明の別の局面は、3つのビオチン部分と複素環式のコアに共有結合した薬剤とを含む化合物に関する。いくつかの態様において、薬剤は、抗生物質、抗ウイルス物質、または放射性核種である。本発明の別の局面は、本発明の化合物を哺乳動物に投与することを含む、疾患を治療するための方法に関する。本発明の別の局面は、本発明の化合物を用いて磁気共鳴画像を得ることに関する。
【発明の詳細な説明】
【0007】
本発明は一般的に、イメージング剤およびドラッグデリバリー剤として有用なビオチン含有化合物に関する。本発明の化合物は、少なくとも1つのビオチン基が付着したコア足場を含む。好ましい態様において、3個または4個のビオチン基がコア足場に付着している。ビオチン基は、イメージング剤またはドラッグデリバリー剤を高い特異性で、所望の部位に向けさせる働きをする。いくつかの態様において、ビオチン基は、少なくとも1つのアミド結合を含むテザーによってコア足場に付着している。好ましい態様において、テザーは、2つのアミド結合の連結を含有するアルキル基である。いくつかの態様において、コア足場は、8、10、12、14または16員環を形成する単環式の(monocylic)ヘテロアルキル基である。好ましい態様においては、コア足場は、キレート基を含む。より好ましい態様において、コア足場は、4個の窒素原子を含有する12員環へテロアルキルである。いくつかの態様において、本発明の化合物は、金属原子に錯体化した上記化合物に関する。いくつかの態様において、前記金属原子は、MRI造影剤として、優れた特性が合成されるように選択される。いくつかの態様において、前記金属原子は、In−111、Tc−99m、I−123、I−125、F−18、Ga−67、またはGa−68である。いくつかの態様において、金属原子は、癌治療薬として、優れた特性が合成されるように選択される。好ましい態様において、金属原子は、90Y、99mTc、188Re、32P、166Ho、109Pd、140La、153Sm、165Dy、または169Erである。より好ましい態様において、金属原子は、Gd3+、Mn2+、Fe3+、Cr3+、ジスプロシウム、ホルミウム、またはエルビウムである。
【0008】
いくつかの態様において、イメージング基は、コア足場に共有結合している。イメージング基という用語は、標的に結合すると脱着することが可能な組成物を意味する。いくつかの態様において、イメージング基は、In−111、Tc−99m、I−123、I−125、F−18、Ga−67、またはGa−68などの放射性核種を含有している。イメージング基は、陽電子放出断層撮影法(Positron Emission Tomography)(PET)、または単一光子放射形コンピュータ断層撮影法(Single Photon Emission Tomography)(SPECT)を用いて視覚化することができる。別の態様において、イメージング剤は、磁気共鳴画像法(MRI)のための不対のスピン原子またはフリーラジカル(例えば、FeもしくはGd)、または造影剤(例えば、キレート化(DTPA)マンガン)である。磁気共鳴画像法のためのさらなる造影剤は、下のMRI造影剤の説明のところで述べる。
【0009】
いくつかの態様において、治療基(therapeutic group)は、コア足場に共有結合している。治療基と言う語は、疾患を治療することが可能な物質を意味する。いくつかの態様において、治療基は、腫瘍もしくは感染症の成長(全身もしくは局所)の確立もしくは成長を妨げることができる。例としては、薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス物質、抗真菌薬)、トキシン(例えば、リシン)、放射性核種(例えば、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67、およびCu−64)、抗ホルモン物質(例えば、タモキシフェン)、重金属錯体(例えば、シスプラチン)、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスヌクレオチド)がある。好ましい治療薬としては、薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス物質、抗菌類)、トキシン(例えば、リシン)、放射性核種(例えば、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67、およびCu−64)、抗ホルモン物質(例えば、タモキシフェン)、重金属錯体(例えば、シスプラチン)、オリゴヌクレオチド(例えば、標的核酸配列(例えば、mRNA配列)に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド)、化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、非特異性(非抗体)タンパク質(例えば、糖オリゴマー)、ホウ素含有化合物(例えば、カルボラン)、光力学的物質(例えば、ローダミン123)、エネジイン(例えば、カリキアマイシン、エスペラミシン、ダイネミシン、ネオカルチノスタチンクロモフォ、およびケダルシジンクロモフォ)、および転写ベースの医薬品がある。好ましい態様において、腫瘍の成長の確立もしくは成長を処置するか、または妨げるための治療薬は、放射性核種、トキシン、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素化合物、またはエネジインである。好ましい態様において、細菌感染症の成長の確立もしくは成長を処置するか、または妨げるための治療薬は、抗生物質、放射性核種、またはオリゴヌクレオチドである。好ましい態様において、ウイルス感染症の成長の確立もしくは成長を処置するか、または妨げるための治療薬は、抗ウイルス化合物、放射性核種、またはオリゴヌクレオチドである。好ましい態様において、真菌感染症の成長の確立もしくは成長を処置するか、または妨げるためには、治療薬は、抗菌化合物、放射性核種、またはオリゴヌクレオチドである。
【0010】
本発明の別の局面は、一般的に、ヒトまたは動物の体の磁気共鳴画像を作成する方法に関する。この方法は、磁気共鳴画像法を必要とする被験体の体に、本発明の化合物を投与するステップ、および磁気共鳴画像を作成する方法を含む。いくつかの態様において、前記化合物は、少なくとも3つのビオチン基を持つ。いくつかの態様において、前記化合物は、ガドリニウム、テクニチウム(technitium)、またはヨウ素を含む。好ましい態様において、前記化合物は、少なくとも3つのビオチンおよびガドリニウムを含む。
【0011】
本発明の別の局面は、一般的に、疾患を治療するために、本発明の化合物の薬学的有効量を必要とする患者を治療する方法に関する。いくつかの態様において、該疾患は、細菌、ウイルス、または真菌感染である。いくつかの態様において、該疾患は癌である。いくつかの態様において、前記化合物は、少なくとも3つのビオチン基を含む。いくつかの態様において、前記化合物は、治療基を含む。好ましい態様において、治療基は、放射性核種、抗生物質、抗ウイルス物質、または抗真菌物質を含む。好ましい態様において、治療基は放射性核種を含む。好ましい態様において、前記化合物は、少なくとも3つのビオチン基およびガドリニウムを含む。
【0012】
MRI造影剤
臨床的撮像技術は、傷害や疾患のプロセスの診断に重要な役割を果たす。今般、種々の撮像技術を用いて、人体の多くの部分を検査することが可能である。ラジオグラフィーは、体の部分を撮像するために長い間用いられてきたものであるが、それによって、X線を外部に作成し、移動できる。コンピュータ体軸断層撮影法(CAT)は、体の平面の断片的なX線画像を提供する。特定の組織または臓器を、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子射出コンピュ−ター断層撮影法(SPECT)、およびガンマシンチグラフィーの標的としてもよい。PET、SPECT、およびガンマシンチグラフィーにおいては、標的となる組織または臓器において、ある程度隔離(濃縮)され得る放射性薬剤を、患者の内部に投与し、放射性薬剤からの放射物質の放出を検出することによって画像を作成する。現時点において撮像に用いられる放射性薬剤としては、例えば、201Tl、99mTc、133Xeなど核種のキレート;放射標識代謝物質、例えば、11C−デオキシ−D−グルコース、18F−2−フルオロでオキシ−D−グルコース、[1−11C]−および[123I]−β−メチル脂肪酸アナログ、13N−アンモニアなど;梗塞アビッド剤(infarct avid agents)、例えば、99mTc−テトラサイクリン、99mTc−ピロホスフェート、203Hg−水銀、67Ga−クエン酸塩など;ならびに放射標識リガンド、タンパク質、ペプチド、およびモノクローナル抗体が挙げられる。赤血球、血小板、白血球などの全細胞を、放射性核種で標識して、放射性薬剤として機能させてもよい。
【0013】
D. R. Elmaleh, et al. [(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 918-921]は、ラットにおいて移植された腫瘍を画像化するために用いられる薬剤、99mTc−標識ApA(99mTc−ApA)を開示している。この研究においては、99mTcをApAへキレート化することによって、99mTcがApA−ジヌクレオチドに付着し、キレート化されていない99mTcも含有する混合物を作製した。この研究は、いくつかのヒト腫瘍細胞が外因性ATPおよびADPに対して浸透性であること、これらの細胞がインタクトなヌクレオチドを正常細胞とは対照的に細胞間プールに組み込むことを前提としている。ApAは、ヘパトーマ細胞に浸透するが、いくつかの未変形の哺乳動物細胞系列には浸透しないことがわかった。移植された腫瘍での蓄積に加えて、1984年の研究での99mTc−ApAも、腎臓、肝臓、骨、筋肉および肺に蓄積する。
【0014】
PET、SPECT、およびガンマシンチグラフィー画像から得られる臨床情報の量とタイプは、標的組織または臓器において放射薬剤を濃縮する能力に部分的に関連する。多くの放射薬剤が臨床で利用可能であるが、作成された画像の解像度は、種々のファクターによって限定されることが多い。罹患もしくは傷害組織を画像化するための特定のイメージング剤の解像度は、周囲の健康組織に対するアフィニティーと比較したときの、放射薬剤の傷害や疾患に対するアフィニティーに部分的に依存する。
【0015】
MRIにおいて、作成された画像のコントラストは、画像化されるゾーンに、通常造影剤と呼ばれる物質を導入することによって増強することができる。その物質は、そこから画像が作成される共鳴信号に関与する核(通常はプロトン、より具体的には水プロトンである「画像化核」)のスピン再平衡化特性に影響を及ぼすものである。造影剤の使用による増強は、特定の臓器や組織のシグナルレベルをその周囲のそれより、増加または減少させることによって、特定の臓器もしくは組織をより鮮明に画像化することができる。周囲に比べて標的部位のシグナルレベルを上げる造影剤は、「陽性」造影剤、一方、周囲に比べてシグナルレベルを下げる造影剤は「陰性」と呼ばれる。現在、MRI造影剤として提案されている材料の大半は、常磁性、超常磁性または強磁性種を含有するため、コントラスト効果を達成している。
【0016】
陰性MRI造影剤である強磁性および超常磁性造影剤については、増強画像コントラストは、主にTまたはスピン−スピン緩和時間として知られているスピン再平衡化率の減少、強磁性または超常磁性特性によって生成される電界の画像核に及ぼす影響から生じる減少に由来する。
【0017】
一方、常磁性造影剤は、陽性MRI造影剤であっても陰性MRI造影剤であってもよい。常磁性物質が磁気共鳴信号強度に及ぼす影響は、多くのファクターに依存する。その最も重要なものは、常磁性物質の画像化部位における濃度、常磁性物質自信の性質、ならびに、画像化ルーチンにおいて用いられるパルスシーケンスおよび磁界強度である。しかしながら、一般的に、T低下効果が優性の低濃度においては、常磁性造影剤は陽性MRI造影剤であり、T低下効果が優性の高濃度においては、陰性MRI造影剤である。いずれの場合も、常磁性中心が磁界の核の画像化に及ぼす影響の結果、緩和時間が減少する。
【0018】
MRI造影剤としての常磁性、強磁性、および超常磁性材料の使用は、広く支持されており、広範囲の好適物質が文献において示唆されている。例えば、Lauterbur他は、マグネシウム塩および他の常磁性無機塩および複合体の使用を示唆している(Lauterburら、"Frontiers of Biological Energetics",
volume 1, pages 752-759, Academic Press (1978), Lauterbur in Phil. Trans. R. Soc. Lond. B289:
483-487 (1980)、およびDoyle ら、J. Comput. Assist. Tomogr. 5(2): 295-296 (1981)参照)。Rungeらは、粒状ガドリニウムオキサラートの使用を示唆している(例えば、米国特許第4,615,879号やRadiology 147(3): 789-791(1983)参照)、Schering AGは、 have suggested the use of 常磁性金属キレート、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、N−ヒドロキシエチル−N,N’,N’−エチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、N,N,N’,−N”,N”−ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、および1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)などのアミノポリカルボン酸の使用を示唆している(例えば、欧州特許第A−71564号、欧州特許第A−130934号、ドイツ特許第A−3401052号、および米国特許第4,639,365号参照)、ならびにNycomed ASは、イミノジ酢酸の常磁性金属キレートの使用を示唆している(例えば、欧州特許第165728号参照)。常磁性金属の他に、常磁性安定フリーラジカルを陽性MRI造影剤で使用することが示唆されている(例えば、欧州特許第A−133674号参照)。
【0019】
他の常磁性MRI造影剤が、例えば、欧州特許第A−136812号、欧州特許第A−185899号、欧州特許第A−186947号、欧州特許第A−292689号、欧州特許第A−230893号、欧州特許第A−232751号、欧州特許第A−255471号、C85/05554号、PCT国際公開第86/01112号、PCT国際公開第87/01594号、PCT国際公開第87/02893号、米国特許第4,639,365号、米国特許第4,687,659号、米国特許第4,687,658号、AJR 141: 1209-1215 (1983), Sem. Nucl.
Med. 13: 364 (1983), Radiology 147: 781 (1983), J. Nucl. Med. 25: 506 (1984), PCT国際公開第89/00557号、国際特許出願第PCT/EP89/00078号に記載されている。
【0020】
強磁性(本明細書においては、フェリ磁性および強磁性物質を包含する意味で用いている)、および超常磁性MRI造影剤、例えば、フリー、または、ポリサッカライドなどの非磁性マトリクス材料の粒子に包含されている、もしくはそれに結合している、サブドメインサイズの磁性酸化鉄粒子について、SchroderとSalfordによってPCT国際公開第85/02772号において、Nycomed ASによってPCT国際公開第85/04330において、Widderによって米国特許第4675173号において、Schering AGによってドイツ特許A−3443252号において、そして、Advanced Magnetics IncによってPCT国際公開第88/00060号において開示されている。
【0021】
陽性造影剤Gd DTPA−ジメグルミン(投与後迅速に細胞外に分散する)、および超常磁性フェライト粒子を別々の時間に静脈投与することについて、癌治療のためにWeisslederらによって、AJR 150: 561-566 (1988)において提案されている。また、直腸血液流を研究するために、Carvlinらによって、Society for Magnetic Resonance imaging, 5th
Annual Meeting, San Antonio, 1987において提案されている。このトピックに関するCarvlinやWeisslederの研究は、さらにProc. SPIE-Int.Soc.Opt.Eng. (1988) 914 Medical
Imaging II, Pages 10-19 およびAJR 150 115-120 (1988)にそれぞれ記載されている。
【0022】
蛍光イメージング
フルオロホアが入射フォトンと相互作用すると蛍光発光が起こる(励起)。フォトンを吸収すると、フルオロホア中の電子が、そのグランド状態から、より高いエネルギーレベルに上昇する。その後、電子は元のレベルに逆転し、波長が反転の間に放射されるエネルギー量によって変わるフォトン(蛍光発光)を放出する。所与のフルオロホアは、電子が種々の軌道からそれらのグランド状態に降下するのに伴って、単一波長または多数波長(発光スペクトルを発生させる)のいずれを放射してもよい。発光スペクトルは、フルオロホアのそれぞれの種ごとに一定である。画像化は、蛍光において多くの用途がある。例えば、以下のものが考えられる。(1)特殊な発光スペクトルに合わせたイメージングシステムを、フルオロホアの位置を突き止めるために使用することができる。例えば、緑色蛍光タンパク質を発現する細胞を画像化し、計測することができる。(2)フルオロホア分子(例えば、fura−2のCa++への結合)は、発光スペクトル中に変性を引き起こす。イメージングシステムを、フルオロホアの環境の変化を示すものとして、これらのスペクトルの変化を測定するために用いることができる。(3)蛍光強度を測定することによって、イメージングシステムは、蛍光標識された分子の濃度を推定することができる。この一般的な例は、遺伝子発現を分析するための蛍光のマイクロアレイでの使用である。
【0023】
局在化:モノクロームおよびマルチスペクトルの蛍光イメージング
最もシンプルなケース(モノクローム蛍光イメージング)においては、単一フルオロホアを用いて、単分子種をマークする。例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識したグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を用いて、CNS外傷後の修復領域を視覚化することができる。同様に、蛍光 in situ ハイブリダイゼーションによって、特異的な染色体DNAの位置を示すことができる。
【0024】
マルチスペクトル蛍光イメージングによって、同一画像中に多くの分子種を示す。それぞれ別個の蛍光タグを、異なる色で視覚化する。例えば、Cy3(緑)およびCy5(赤)で示し、重なる領域は色を混合して示してもよい(例えば、赤と緑の重なりは、黄色のように示される)。MCID(登録商標)およびAISは、マルチスペクトルの蛍光を2通りの方法で処理する。
【0025】
最も高い品質を得るために、各フルオロホアを最適条件下で個別に視覚化する。例えば、FITCの異なる画像およびローダミン蛍光を生成する。次いで、イメージフュージョン(Image Fusion)機能によって、2つの画像を組み合わせて、標識された組織部分どうしの相互関係を示す単色画像にする(図)。この方法によれば、3つの理由から、最良の画質が得られる。第1に、高解像度、非常に感度の高い冷却カメラを用いることができる。第2に、蛍光光学(例えば、励起と発光フィルター)を最適に各波長に合わせる。第3に、それぞれ異なる画像を最終的に融合画像にする寄与度に対するフレキシブルコントロールを有している。
【0026】
最も都合よく操作するために、フルオロホアを同時に視覚化する。この場合、光学は、フルオロホアごとに、同時マルチスペクトル励起および異なる発光波長を提供する。カラーカメラを用いて、多色検体を画像化する。標準的なカラーカメラは、蛍光発光を視覚化するのに十分な感度を持たないため、一体型カラーカメラを用いる。
【0027】
定量化:フルオロホア環境の変化
pHの変化、フルオロホアと特異的なイオンとの結合、多くの他の環境的要因が、フルオロホアの発光スペクトルの変化をもたらし得る。そのような変化の測定は、伝統的にはキュベットで行われていた。しかしながら、イメージングシステムが、細胞レベルおよび細胞下レベルで類似の測定を行うことを可能にする種々の方法が開発されている。MCIDは、フルオロホア環境における変化の定量化のための専用の機能を含む。
【0028】
典型的な蛍光測定には、面積および比例した面積、蛍光標的の数、および蛍光強度が含まれる。空間測定は、かなりわかりやすく、大半の画像分析によって多少良好に行われる。対照的に、強度測定は、蛍光フェード現象、良好な校正基準を行うのが難しいため、かなり厄介である。MCIDが示してきた量的な強度測定能は、ユーザーを測定器具の弱点ではなく、検体に集中させている。重要なことに、標準的なビデオカメラは、蛍光の適用に十分適さず、専用の弱光カメラが通常必要である。しかしながら、広範な一体型カメラは、MCIDやAISとの併用が可能である。
【0029】
蛍光イメージング成分
強化CCD(ICCD)は、イメージインテンシファイアと一体化したビデオカメラからなる。インテンシファイアは、入射照度を、調整可能なファクターによって増幅する。ICCDは、相対的に薄暗い検体を短時間で画像化するという点で、高速である。それらの主な弱点は、高増幅で画像の粒子が粗いこと、詳細な細かいコントラストを表現できないこと、イントラセンス(intrascene)ダイナミックレンジが限定されていることである。すなわち、ICCDは、同じ画像中に明るい物質と薄暗い物質の両方を見ることはできない(約40:1の典型的なダイナミックレンジ)。ICCDは、ダイナミック蛍光イメージングに最も適している。それらが高速に画像を提供する能力は、非常に有利である。目的の多くにおいて、GEN IVインテンシファイアが推奨され、それは他の変形例と比べてはるかに良好な画質を提供する。種々のICCDカメラも利用可能であるが、我々は、GEN IVインテンシファイア、一体型CCDカメラ、およびコントロールユニットを備えたRoper InstrumentsビデオICCDを提供する。これは一段ICCDによって得られる感度とほぼ同一の感度を持ち、かつさらに非常にフレキシブルであるという利点がある。非常に薄暗い検体については、多段インテンシファイアを利用可能であり、フォトン計数にしばしば応用される。我々の意見では、多段ICCDを用いた作業のトライアルが有意義であり、究極的な感度が要求される場合、Black Ice低温用一体型カメラを用いることが好ましい。
【0030】
一体型カメラは、フィルム様である。それらは、経時的に入射照度を統合する。通常、一体型カメラは、強化カメラよりも良好な画像および広範なダイナミックレンジを提供する。MCIDおよびAISは、種々の一体型カメラをサポートする。一体型ビデオカメラは、低コストであり、免疫標識された細胞のような適度に明るい検体に好適である。より明るい検体では、カメラは冷却しなくてよい。より薄暗い検体では、冷蔵(約0℃)または冷却(0℃以下)一体型ビデオカメラが依然としてコスト効率がよい。しかしながら、あらゆるカメラが要求の多い検体について機能を果たすということは期待できない。一体型ビデオ技術は、低コストと引き換えに、感度とダイナミックレンジ(8〜10ビットに限定される)を犠牲にしているのである。
【0031】
ビデオについての次のステップは、適度に価格設定された一体型カメラのファミリーであり(例えば、Roper SensysまたはHamamatsu 4742)、それは、一体型モードで操作可能な高解像度CCDを使用している。典型的に、これらのカメラは、約0℃に冷蔵されており、蛍光で検体の詳細なイメージを作成する。
【0032】
より難しい検体には、科学的グレードの冷却カメラが使用される。「科学的グレード」の正確な定義は変動的であるが、通常これらのデバイスは、全適用範囲CCD、高精度デジタイザー(>12ビット)、および強度の冷却を使用する。これらのカメラの中で最も進歩したものは、特別な、高感度CCDおよび低温用冷却(−100℃以下に冷却)を用いている。Black Iceカメラは、全ての技術的利点を組み込んで、絶対的に最先端の性能を算出することが知られている。あいにく、Black Iceテクノロジーは費用がかかるが、合理的な値段の多くの科学的グレードカメラが存在し、優れた性能を発揮している。
【0033】
イメージングシステム
強化カメラからのシングルビデオフレーム(1/30秒で作成)は、非常に粒子が粗い。弱光画像の質は、リアルタイムの平均加算によって向上される。したがって、ICCDカメラは、高速平均加算が可能なあらゆるイメージングシステムと、インターフェイスで接続する。イメージングシステムが比率を構築し、リアルタイムで蛍光バックグランド減産できれば有用である。
【0034】
一体型カメラは、イメージングシステムに対して多くの問題を提示する。一体型カメラの効率的な使用は、下記の要件を提示する:(1)一体型カメラおよびソフトウェア:MCID/AISは、あらゆるカメラからの画像を使用することができるが(TIFFファイルを輸入することによる)、カメラの画像分析ソフトウェアが種々の露出やデータ転送パラメータをコントロールすることもできれば、好都合である。専用カメラソフトウェアでの画像の取得と、別個のパッケージでの画像分析は、非常に冗長である。(2)高精度データのアクセプト:イメージングシステムは、データを受け入れて、高ビット濃度で較正しなければならない(一体型カメラは、8〜18ビットでデータを提供する)。(3)高速インターフェース:イメージングシステムは、一体型カメラに対する高速インターフェースを含まなければならない。最良のカメラは、イメージングシステムインターフェースボードまたはそれら自身のインターフェースカードとの専用の連結(例えば、RS422)を備えている。SCSIまたは他のスロー連結を介しての画像の取得は、実行する製造者にとって安価で、かつ容易であるが、実際には、画像化スループットを低下させている。
【0035】
MCIDは、一体型カメラの高速で効率的なコントロールを含み、高ビット密度に較正することができる。AISは、それがサポートする種々のカメラの中でより限定的であるが、高ビット密度およびサポートされた一体型カメラの直接的コントロールを使用できる能力を保持している。
【0036】
ダイナミック蛍光イメージング
MCIDは、標準的な画像分析パッケージの一部としてのダイナミック蛍光のための専用ソフトウェアを含む。これは、2つの大きな利点を有している。a)定量的オートラジオグラフィー、形態計測、および蛍光デンシトメトリーを行うシステムが、さらなるソフトウェアを使わずにレシオメトリック計測をも行うことができる。b)ダイナミック蛍光イメージングは、異なるプログラムとして学ぶ必要がない。むしろ、分析、アーカイブ、アノテーション、拡張、および他の操作すべてを、慣れたMCID機能を用いて、一連の蛍光イメージングとして容易に行うことができる。MCIDは、非常に多数の密接画像を直接コンピュータ中に取得することができる。このオンラインダイナミックイメージングは、ICCDおよび一体型カメラを含む、MCIDがサポートするカメラの全てを用いて利用可能である。
【0037】
レシオメトリックイメージング
レシオメトリックイメージングは、蛍光塗料が標的イオンと結合したときに表示されるスペクトルシフトを利用する。MCIDは、カルシウムのfura−2イメージングおよびpHのBCECFイメージングを含む種々のタイプのレシオメトリックイメージングをサポートする。
【0038】
カルシウムキレーター、fura−2は、サイトゾルを含まないCa++濃度を測定するために使用される。飽和カルシウム形状のfura−2は、約335NMで最大の吸光度を持つ。カルシウムを含まない形状は、約362NMで最大の吸光度を持つ。蛍光強度の比率(通常340:380)は、ほぼ飽和溶液とカルシウムを含まない溶液との間の大きさのレベル分異なる。このように340画像の相対的輝度は、Ca++に結合するFura−2の比率の上昇を反映する。
【0039】
インキュベートし、fura−2を注入した細胞の、異なる340nm画像および380nm画像を作成した。340nm画像および380nm画像を適切なバックグランドによって補正し、比率画像を形成した。340nmと380nmの比率から、簡単な式(下記を参照)を用いて、Ca++濃度を求める。
【0040】
Rminは、最低Ca++濃度を形成する蛍光強度の比率(340:380)である。Rmaxは、飽和Ca++濃度を形成する比率(340:380)である。F0/Fsは、最低および飽和Ca++濃度の傾向強度の比率(380nm)である。KDは、Ca++およびfura−2の平衡解離定数であり、通常約225である(Grynkiewicz, Poenie and Tsien, 1985; Williams
and Fay, 1990)。各実験室は、それ自身の条件下でfura−2技法を較正しなければならない。比率画像は、スペクトルカラーを用いて表示してカルシウム濃度を表すことができる。該比率は、色と強度を別個に調節することによって表示することもできる。この場合、強度は、オリジナルの成分画像(画像中のある時点における比率の信頼度に必然的に等しい)を反映し、色は、カルシウム濃度を反映する。
【0041】
細胞内pHのためのポピュラーな指示塗料は、BCECF(Rink, Tsien and Pozzan, 1982; Bright et al.,
1987)である。BCECFは、503nmに励起ピーク、525nmに発光ピークを示し、可視波長で強く蛍光を発する。双方のピークは、pH依存性であり、酸性化によってクエンチングし、アルカリ性が強い環境になると増強する。しかしながら、436−439nmで、蛍光はpHに非依存的である。したがって、pH依存性とpH非依存性BCECF画像の間で比率を構築することができる。理論的には、比率は、塗料濃度、照度などの無関係の影響にはpH非依存性を反映するであろう。BCECFを用いたpH測定のための一連のフィルターは、励起フィルター(440nmおよび495nm)、515nm二色性ミラー、および発光フィルター(535nm)を含む。バックグランドは、440nmおよび495nmで取得される。全ての処置は、Ca++イメージングに関するものである。比率は、下記の式から求められる。
pH=pK+log(R−Rmax)(Rmax−R)
【0042】
Rは、各波長において、pH7.0で、画像のあらゆる部分における平均強度の比率として得た、正規化された495/440nm蛍光比率である。pK7.17で開始し、条件に適する値を計算することが提案されている。BCECFは、K+/H+イオノフォア、ナイジェリシンを用いて最も一般的に較正され、公知の内部pHに曝露する(Thomas, et al., 1979)。
【0043】
バックグランド蛍光を補正するため、2つの励起画像から比率を作成する(例として、340および380nmを用いる)。MCIDは、比率を作成する前に、励起画像を補正するための3つのモードを提供する。a)減算:バックグランド蛍光およびインテンシファイアまたはカメラオフセットの除去。340および380nmの画像のそれぞれのバックグランド値を入力する。比率を計算する前に、これらのバックグランド値を自動的に340および380nmの画像から減算する。これはシンプルな、ワンステップ補正であり、同一のバックグランドエラーが視野の全フィールドに適用される。b)比例:シェーディングエラーの補正。2つの独立した、画素ごとのシェーディング補正を適用する:各起画像ごとに1つ、ブランクフィールド(シェーディングフィールド)を各励起について取得する。双方のシェーディングフィールドにおいて、各ピクセルエラーが比例として表される。一連の励起画像を適切な比例によって、あらゆる比率を計算する前に補正する。c)減算+比例:減算および比例シェーディング補正を用いることができる。
【0044】
フレキシブル励起条件
2つの励起波長から得た画像から、比率画像を計算する。最もシンプルなケースでは、各励起波長につき、単一の画像を取得し、次いで比率を構築する。しかしながら、一連の画像を取得して、比率を構築する前に処理してもよい。例えば、一連の340/380変更から、最終画像を構築してもよい。これは、1つの波長における差動部ブリーチングを避けることができる。また、異なる励起条件のスキップを明示することもできる。例えば、一連の20の定期的な比率を得て、毎秒得た380nm画像を取得する。しかしながら、340nm画像は、3秒おきにだけ取得される。
【0045】
多数比率画像からのデータの読取およびグラフ化
多くの定期的な比率からのデータを同時に読み取ってもよい。サンプルツールをフェーズまたはDIC画像、あらゆる励起画像、またはあらゆる比率画像上に置くことにより、MCIDは、全部にまたがるデータをレポートする。このレポートは、下記のいずれかもしくは全てを含む。
励起1および2におけるグレーレベル値
比率
Ca++濃度または他の測定
【0046】
フォトメーターモード
いくつかのケースにおいて、画像は必要ではない。むしろ、単一の画像を作成し、その画像上の対象領域を定義し、それらの領域からの比率をシステムに経時的に読み取らせることが望まれる。それは、多数のウインドウを持つフォトメーターとしてイメージングシステムを利用しているようなものである。MCIDは、多くの「フォトメーターウインドウ」を画像上に置き、これらのウインドウの密度値が比率を構築することを可能にする。
【0047】
フォトメーターモードは、全時間、一連の比率およびCa++濃度値を作成する。フォトメーターデータをメモリーに保存する必要がないので、あらゆる時間を用いることができ、あらゆる数の領域を読み取ることができる。数値を、獲得プロセスの中でグラフ化してもよい。
【0048】
2つの励起波長の調節
理想的なレシオメトリックイメージングは、全ての画像をほぼ同じ強度で、カメラ操作の線形の範囲の中で取得することを必要としている。一体型カメラは、強度のバランス化の問題点に的確な回答を与える。ユーザーは、波長ごとに統合時間を異なるように調節するだけでよい。これは、MCIDのレシオメトリック機能を用いて、迅速かつ容易に行われる。
【0049】
ICCDにはいくつかの問題がある。ICCD輝度は、インテンシファイア増幅(コンピュータの制御下)で波長ごとに変化させることによってバランスを取ることができる。これは、増幅ファクターの範囲にわたって、インテンシファイア反応が線形であることが証明されていない場合は、便利であるが、危険である。別の選択肢は、励起フィルターの前に、搭載のNDフィルターを用いて、より明るい波長において蛍光強度を減少させることである。種々の減衰フィルター(例えば、25%、50%、75%)を、フィルターホイールの異なる位置、または第2の位置に搭載してもよい。この選択肢は、フィルターホイールでのフィドリングを必要とするが、インテンシファイア増幅が一定のレベルに維持されることが要求される。
【0050】
単一励起、単一発光
単一励起、単一発光処置は、レシオメトリーよりはるかにシンプルである。必要なことは、定期的な間隔で画像を取得し、それらの画像から蛍光強度を測定することだけである。蛍光強度または蛍光位置の変化(例えば、GFP標識されたレセプターの内在化)を追跡することができる。強度の変化は通常、質的である。すなわち、蛍光発光の変化の発生はわかるが、イオン濃度の変化を定量化することはできない。
【0051】
単一発光処置の例では、Ca++インジケーター、fluo−3が使用される。それは、スペクトルの可視領域の503−506nmで励起する。Fluo−3は、fura−2またはindo−1に比べてCa++に対するアフィニティーが弱く(KD、約400nm)、低濃度のCa++濃度の測定が可能である。それはまた、Ca++結合で、非常に顕著な蛍光強度(約40年)の変化を示す。これを、fura−2によって示される蛍光強度の変化を10倍したものと比較する。励起波長が1つだけ存在するもが、MCIDの単一発光オプションは、fura−2画像と使用に類似性がある。フィルターホイールの変化は必要ではないので、むしろ短い内部画像間隔が可能である。
【0052】
定義
本明細書、実施例、および添付の請求項の中で用いられる特定の用語を便宜上、この項目に集めた。
【0053】
本明細書において用いられているところの用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外のあらゆる元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、ホウ素、窒素、酸素、リン、イオウおよびセレニウムである。
【0054】
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基のラジカルを意味する。好ましい態様において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格に30以下の炭素原子を有している(例えば、直鎖ではC−C30、分枝鎖ではC−C30)、そしてより好ましくは20以下の炭素原子を有している。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造に3〜10、より好ましくは、5、6または7の炭素原子を有している。
【0055】
直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基が、任意に置換されているものを表す場合、1以上の部分において、アルキル基が、下記に示すような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、フォスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、フルオロネーテッドアルキシル(floronated alkysl)およびニトリルなどで置換されていることを意味することが理解される。
【0056】
炭素数が特に規定されていなければ、本明細書において用いられている「低級アルキル」は、上で定義したように、その骨格構造に1〜10の炭素原子、より好ましくは1〜6の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、同様の鎖長を持つ。好ましいアルキル基は、低級アルキルである。好ましい態様において、本明細書において、アルキルとして示されている置換基は、低級アルキルである。
【0057】
本明細書において用いられている用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基を言う(例えば、芳香族基またはヘテロ芳香族基)。
【0058】
「アルケニル」および「アルキニル」は、長さが類似し、上述のアルキルに置換することができるが、少なくとも1つの二重または三重結合をそれぞれ含有する不飽和脂肪族基を言う。
【0059】
本明細書において用いられている用語「アリール」は、0〜4個のヘテロ原子を含むことができる5、6および7員環芳香族基を含む。例えば、ベンゼン、アントラセン、ナフタレン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。環構造中にヘテロ原子を持つこれらのアリール基はまた、「アリールへテロ環」または「ヘテロ芳香族」とも呼ばれる。芳香族環は、1以上の環位置において上記したような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香族もしくは芳香族部分、−CF、−CNなどと置換することができる。用語「アリール」もまた、2以上の炭素原子が2つの結合環に共通しており(そのような環を「融合環」という)、そのような環の少なくとも1つが芳香族である(例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはへテロ環であることができる)、2以上の環式環を持つ多環系を含む。
【0060】
用語オルト、メタおよびパラは、1,2−、1,3−および1,4−ジ置換ベンゼンにそれぞれ該当する。例えば、1,2−ジメチルベンゼンおよびオルト−ジメチルベンゼンは同義である。
【0061】
用語「ヘテロ環」または「ヘテロ環基」は、その環構造が1〜4のヘテロ原子を含む3〜10員環、より好ましくは3〜7員環構造を言う。ヘテロ環はまた、多環であることもできる。ヘテロ環基としては、例えば、チオフェン、チアンスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、サルトンなどが挙げられる。ヘテロ環式環は、1以上の位置において上記の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどと置換され得る。
【0062】
用語「多環」または「多環基」は、2以上の炭素原子が2つの結合環に共通している(例えば、そのような環は「融合環」である)、2以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはへテロ環)を意味する。隣接しない原子を介して結合する環は、「架橋された」環と呼ばれる。多環の環のそれぞれは、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミノ、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどと置換される。
【0063】
本明細書において用いられているところの、用語「ニトロ」は、−NOを意味し;用語「ハロゲン」は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを示し;用語「スルフヒドリル」は、−SHを意味し;用語「ヒドロキシル」は、−OHを意味し;用語「スルホニル」は−SO2−を意味する。
【0064】
用語「アミン」および「アミノ」は、技術的に認識されており、非置換型アミンおよび置換型アミンの双方を意味し、例えば、下記の一般式で表すことができる部分を意味する。
【化25】

但し、式中、R、R10、およびR’10は、それぞれ個別に、原子価の規則によって認められた基を表す。
【0065】
用語「アシルアミン」は、技術的に認識されており、下記の一般式で表すことができる部分を意味する。
【化26】

但し、式中、Rは上で定義したとおりであり、R’11は、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−Rを表し、mおよびRは、上で定義したとおりである。
【0066】
用語「アミド」は、アミノ置換型カルボニルとして技術的に認識されており、下記の一般式で表すことができる部分を意味する。
【化27】

但し、式中、R、R10は、上で定義したとおりである。アミドの好ましい態様は、不安定かもしれないイミド類を含まない。
【0067】
用語「アルキルチオ」は、上記のように、そこにイオウラジカルが付着したアルキル基を意味する。好ましい態様において、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、および−S−(CH−Rのいずれかによって表され、ここで、mおよびRは、上で定義したとおりである。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオなどを含む。
【0068】
用語「カルボニル」は、技術的に認識されており、そのような部分は、下記の一般式によって表すことができる。
【化28】

式中、Xは結合であり、または酸素またはイオウを表し、R11は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−Rまたは薬学的に許容される塩を表し、R’11は、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−Rを表し、mおよびRは、上で定義したとおりである。Xが酸素であり、R11またはR’11が水素でない場合、式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、R11が上記のとおりであれば、この部分は本明細書においてカルボキシル基と称し、R11が水素であれば、式は、「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R11またはR’11が水素である場合、式は「ホルマート」を表す。通常、上記式の酸素原子がイオウに置き換えられると、式は、「チオールカルボニル」基を表す。Xがイオウであり、R11またはR’11が水素でない場合、式は「チオールエステル」を表す。Xがイオウであり、R11が水素である場合、式は「チオールカルボン酸」を表す。Xがイオウであり、R’11が水素である場合、式は「チオールホルマート」を表す。一方、Xが結合であり、R11が水素でない場合、上記式は、「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R11が水素である場合、上記式は、「アルデヒド」基を表す。
【0069】
本明細書において用いられているところの、用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、上記のようにそこに酸素ラジカルが付着したアルキル基を表す。代表的なアルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、第三ブトキシなどを含む。「エーテル」は酸素と共有結合した2つの炭化水素である。したがって、アルキルを置換することによって、アルキルをエーテルにし、または、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH−Rなどのようなアルコキシルに類似する。ここで、mおよびRは、上で定義したとおりである。
【0070】
用語「スルホネート」は、技術的に認識されており、下記の一般式によって表すことができる部分を含む。
【化29】

式中、R41は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0071】
用語、トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリル(nonaflyl)は、技術的に認識されており、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基、およびノナフルオロブタンスルホニル基をそれぞれ表す。用語トリフラート、トシラート、メシラート、およびノナフラート(nonaflate)は、技術的に認識されており、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、およびノナフルオロブタンスルホン酸エステルの官能基および前記基を含有する分子をそれぞれ表す。
【0072】
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、Msは、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、およびメタンスルホニルをそれぞれ表す。有機化学の当業者によって用いられる、略語のより総合的なリストは、Journal
of Organic Chemistryの各巻の最初の項目にあり、通常は、Standard List of Abbreviationsというタイトルの表で書かれている。前記リストに含まれる略語および有機化学の当業者によって用いられる全ての略語を本明細書においては、引用によって援用する。
【0073】
用語「サルフェート」は技術的に認識されており、下記の一般式によって表される部分を含む。
【化30】

式中、R41は、上で定義したとおりである。
【0074】
用語「スルホニルアミノ」は技術的に認識されており、下記の一般式によって表される部分を含む。
【化31】

【0075】
用語「スルファモイル」は技術的に認識されており、下記の一般式によって表される部分を含む。
【化32】

【0076】
本明細書において用いられているところの、用語「スルホニル」は、下記一般式によって表される部分を言う。
【化33】

式中、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールからなる群から選択される。
【0077】
本明細書において用いられているところの、用語「スルホキシド」は、下記一般式によって表される部分を言う。
【化34】

式中、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、またはアリールからなる群から選択される。
【0078】
「セレノアルキル」は、置換されたセレノ基が付着したアルキル基を言う。アルキルに置換し得る「セレノエーテル」の例としては、−Se−アルキル、−Se−アルケニル、−Se−アルキニル、−Se−(CH−Rから選択されるものがあげられる。mおよびRは、上で定義したとおりである。
【0079】
類似の置換を、アルケニルおよびアルキニル基に対して行い、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換されたアルケニル、またはアルキニルを作製することができる。
【0080】
本明細書において用いられているところの、例えば、アルキル、m、nなどの各表現の定義は、あらゆる構造に1回以上出てくる場合、同じ構造の他の箇所とは、その定義は独立していることが意図される。
【0081】
「置換」または「〜で置換された」は、そのような置換が、その置換された原子および置換基の許容される原子価にしたがっていること、および置換の結果、例えば、再組み換え、環形成、除去などの変性を自発的に行わない安定した化合物が得られるという暗黙の条件を含んでいることが理解されるであろう。
【0082】
本明細書において用いられている用語「置換された」は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことを意図している。広い局面において、許容可能な置換基は、非環式および環式、枝分かれしているおよび枝分かれしていない、炭素環式およびヘテロ環式、芳香族および非芳香族基の置換基を含む。例示の置換基は、例えば、本明細書において上記したものを含む。許容可能な置換基は、1もしくは複数の、および同じもしくは異なる適切な有機化合物とすることができる。本発明の目的において、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/または、本明細書に記載した、該ヘテロ原子の原子価を満たすあらゆる有機化合物の許容可能な置換基を含むことができる。本発明は、許容可能な、有機化合物の置換基によって、いかなる方法においても制限されることを意図していない。
【0083】
本明細書において用いられているフレーズ「保護基」は、潜在的に反応性のある官能基を望ましくない化学的変性から保護する一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例としては、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、ならびにアルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールを、それぞれ含む。保護基化学の分野は概説されている(Greene, T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.;
Wiley: New
York, 1991)。
【0084】
本発明のいくつかの化合物は、特定の幾何学形状または立体異性体形状で存在し得る。本発明は、シス−およびトランスアイソマー、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(d)−アイソマー、(l)−アイソマー、そのラセミ混合物、およびその他の混合物を含む全てのそのような化合物を本発明の範囲であると考えている。さらに非対称的な炭素原子は、アルキル基などの置換基に存在することができる。そのような全てのアイソマーならびにその混合物は、本発明に含まれることが意図されている。
【0085】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望ましい場合、それは非対称合成、またはキラル補助によって調製してもよい。そこでは、得られたジアステレオマー混合物が分離され、補助基が切断され、純粋な所望のエナンチオマーが提供される。あるいは、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含有する場合、ジアステレオマー塩は、適切な、任意に活性のある酸または塩基を用いて形成され、当該技術分野において公知の分別結晶作用またはクロマトグラフィーの手段によって形成されたジアステレオマーを溶解させ、その後純粋なエナンチオマーが回収される。
【0086】
上記した化合物と均等であると考えられているものとして、それに対応し、同じ一般的な特性(例えば、鎮痛剤として機能する)を有し、化合物の有効性に悪影響を及ぼさない1以上の単純な置換基の変形がシグマ受容体との結合中に形成されている化合物を含む。一般的に、本発明の化合物は、例えば、下記の一般的な反応スキームに示されている方法によって、またはその変形例によって、容易に入手可能な開始物質、試薬および従来の合成手順を用いて、調製することができる。これらの反応においては、公知であるが、ここに記載していない変形例を使用することも可能である。
【0087】
本発明の目的において、化学元素は、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics, 第67刷、1986〜87年の裏表紙に記載の元素周期表によって確認される。
【0088】
本発明の化合物
本発明のある局面は、下記式Iで表される化合物に関する。
【化35】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Xは、それぞれ個別に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【0089】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Yはそれぞれ個別に、−C(O)−を表す。
【0090】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、nは、それぞれ個別に2を表す。
【0091】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表す。
【0092】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは、−C(O)−を表す。
【0093】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表す。
【0094】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に−[((C−C)アルキル−NRC(O))−(C−C)アルキル]−を表す。
【0095】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表し、mは2であり、RはHである。
【0096】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化36】

式中、sは、1、2、3、または4である。
【0097】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化37】

式中、sは3または4である。
【0098】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化38】

【0099】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化39】

【0100】
本発明の別の局面は、下記式IIで表される化合物に関する。
【化40】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【0101】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Mは遷移金属である。
【0102】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Mは、In−111、Tc−99m、I−123、I−125、F−18、Ga−67、Ga−68、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67、およびCu−64からなる群から選択される。
【0103】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Mは、Tc−99m、Ga−67、およびGa−68からなる群から選択される。
【0104】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Mは、Gd3+、Mn2+、Fe3+、Cr3+、ジスプロシウム、ホルミウム、およびエルビウムからなる群から選択される。
【0105】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Mは、Gd3+、Mn2+、Fe3+、およびCr3+からなる群から選択される。
【0106】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Yは、それぞれ個別に、−C(O)−を表す。
【0107】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、nは、それぞれ個別に2を表す。
【0108】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表す。
【0109】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは、−C(O)−である。
【0110】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Xは、それぞれ個別に、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表す。
【0111】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Xは、それぞれ個別に、−[((C−C)アルキル−NRC(O))−(C−C)アルキル]−を表す。
【0112】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Xは、それぞれ個別に、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表し、mは2であり、RはHである。
【0113】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に下記式から選択される。
【化41】

式中、sは、1、2、3、または4である。
【0114】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に下記式から選択される。
【化42】

式中、sは、3または4である。
【0115】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、Xは、それぞれ個別に下記式から選択される。
【化43】

【0116】
いくつかの態様において、本発明は、化合物Iに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化44】

【0117】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化45】

そして、COHは、Mに調整されている。
【0118】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Mは、Gd3+であり、Xは、それぞれ個別に、下記式を表す。
【化46】

【0119】
本発明の別の局面は、下記式IIIで表される化合物に関する。
【化47】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品である。
【0120】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Yは、それぞれ個別に−C(O)−を表す。
【0121】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表す。
【0122】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表す。
【0123】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Aは共有結合である。
【0124】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは、−C(O)−である。
【0125】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Xは、それぞれ個別に−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表す。
【0126】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Xは、それぞれ個別に、−[((C−C)アルキル−NRC(O))−(C−C)アルキル]−を表す。
【0127】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Xは、それぞれ個別に−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表し、mは2であり、RはHである。
【0128】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Xは、それぞれ個別に、−[((C−C)アルキル−NRC(O))−(C−C)アルキル]−を表し、mは2であり、RはHである。
【0129】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化48】

式中、sは、1、2、3、または4である。
【0130】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Xは、それぞれ個別に下記式から選択される。
【化49】

式中、sは、3または4である。
【0131】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Xは、それぞれ個別に下記式から選択される。
【化50】

【0132】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化51】

【0133】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Aは共有結合であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化52】

【0134】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Zは抗感染症薬であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化53】

【0135】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Zは抗腫瘍物質であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化54】

【0136】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Zは消炎性物質であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化55】

【0137】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Zは、抗感染症薬、消炎性物質、または抗腫瘍物質である。
【0138】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IIIに関し、Zは、アバカビルサルフェート、アバレリックス、アカルボース、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アシトレチン、活性化タンパク質C、アシクロビル、アデフォビルジピボキシル、アデノシン、副腎皮質ホルモン、アルブテロール、アレンドロネートナトリウム、アロプリナル、アルファ1プロテイナーゼ阻害物質、アルプラゾラム、アルプロスタジル、アルチニクリン、アミホスチン、アミオダロン、アミトリプチリンHCL、アムロジピンベシレート、アモキシリン、アンプレナビル、アナグレリドヒドロクロリド、アナリチド、アナストロゾール、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アリピラゾール、アステミゾール、アテノロール、ブプロピオンヒドロクロリド、ブスピロン、酒石酸ブトルファノール、カベルゴリン、カフェイン、カルシトリオール、カンデサルタン、シレキセチル、カンドキサトリル、カペシタビン、カプトプリル、カルバマゼピン、カルビドパ/レボドーパ、カルボプラチン、カリソプロドール、カルベジロール、カスポファンギン、セファクロル、セファドロキシル、シクロスポリン、ダルテパリンナトリウム、ダピタント、デスモプレシンアセテート、ジアゼパム、ABT594、ジクロフェナクナトリウム、ジシクロミンHCL、ジダノシン、ジゴキシン、ジルチアゼムヒドロクロリド、フェンタニル、フェキソフェナジンヒドロクロリド、フィルグラスチムSD01、フィナステリド、フレカイニドアセテート、フルコナゾール、酢酸フルドロコルチゾン、フルマゼニル、フルオキセチン、フルタミド、フルバスタチン、フルボキサミンマレアート、フォリトロピンアルファ/ベータ、ホルモテロール、フォシノプリル、フォシノプリルナトリウム、フロセミド、ガバペンチン、ガドジアミド、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドテリロール(gadoteridol)、ガナキソロン、ガンシクロビル、ガントフィバン(gantofiban)、ガストリンCW17イムノゲン、ゲムシタビン ヒドロクロリド、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシンイソトン、ゲピロンヒドロクロリド、ピオグリタゾンヒドロクロリド、ピペラシリンナトリウム、プレコナリル、ポロキサマーCW188、ポサコナゾール、NN304、プラミペキソールジヒドロクロリド、プラバスタチンナトリウム、プレドニゾン、プレガバリン、プリミドン、プリノマスタート(prinomastat)、マレイン酸プロクロルペラジン、バルデコキシブ、バルプロ酸、バルサルタンヒドロクロロチアジド、バルスポダール、バンコマイシンHCL、ベクロニウムブロミド、ベンラファキシンヒドロクロリド、ベラパミルHCL、酒石酸ビノレルビン、ビタミンB12、ビタミンC、ボリコナゾール、ワルファリンナトリウム、キサリプロデン、およびザフィルルカストからなる群から選択される。
【0139】
いくつかの態様において、本発明は化合物IIIに関し、Aは、化式で表される。
【化56】

【0140】
いくつかの態様において、本発明は化合物IIIに関し、Zは、抗感染症薬、消炎性物質、および抗腫瘍物質から選択され、Aは、化式で表される。
【化57】

【0141】
本発明の別の局面は、式IVで表される化合物に関する。
【化58】

式中、式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Aは、共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Xの官能基は、Mに調整されておらず;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品である。
【0142】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Yはそれぞれ個別に、−C(O)−を表す。
【0143】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表す。
【0144】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表す。
【0145】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Aは共有結合である。
【0146】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは、−C(O)−である。
【0147】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表す。
【0148】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に−[((C−C)アルキル−NRC(O))−(C−C)アルキル]−を表す。
【0149】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−を表し、mは2であり、RはHである。
【0150】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に−[((C−C)アルキル−NRC(O))−(C−C)アルキル]−を表し、mは2であり、RはHである。
【0151】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に−[((C−C)アルキル−NRC(O))−(C−C)アルキル]−を表し、mは2であり、RはHであり、Aは共有結合である。
【0152】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化59】

式中、sは、1、2、3、または4である。
【0153】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化60】

式中、sは3または4である。
【0154】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化61】

【0155】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化62】

【0156】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Aは共有結合であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化63】

【0157】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Zは抗感染症薬であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化64】

【0158】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Zは抗腫瘍物質であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化65】

【0159】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、nは、それぞれ個別に2を表し、Rは、それぞれ個別に水素を表し、Yは−C(O)−であり、Zは消炎性物質であり、Xは、それぞれ個別に、下記式のいずれかを表す。
【化66】

【0160】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Zは、抗感染症薬、消炎性物質、または抗腫瘍物質である。
【0161】
いくつかの態様において、本発明は、化合物IVに関し、Zは、アバカビルサルフェート、アバレリックス、アカルボース、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アシトレチン、活性化タンパク質C、アシクロビル、アデフォビルジピボキシル、アデノシン、副腎皮質ホルモン、アルブテロール、アレンドロネートナトリウム、アロプリナル、アルファ1プロテイナーゼ阻害物質、アルプラゾラム、アルプロスタジル、アルチニクリン、アミホスチン、アミオダロン、アミトリプチリンHCL、アムロジピンベシレート、アモキシリン、アンプレナビル、アナグレリドヒドロクロリド、アナリチド、アナストロゾール、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アリピラゾール、アステミゾール、アテノロール、ブプロピオンヒドロクロリド、ブスピロン、酒石酸ブトルファノール、カベルゴリン、カフェイン、カルシトリオール、カンデサルタン、シレキセチル、カンドキサトリル、カペシタビン、カプトプリル、カルバマゼピン、カルビドパ/レボドーパ、カルボプラチン、カリソプロドール、カルベジロール、カスポファンギン、セファクロル、セファドロキシル、シクロスポリン、ダルテパリンナトリウム、ダピタント、デスモプレシンアセテート、ジアゼパム、ABT594、ジクロフェナクナトリウム、ジシクロミンHCL、ジダノシン、ジゴキシン、ジルチアゼムヒドロクロリド、フェンタニル、フェキソフェナジンヒドロクロリド、フィルグラスチムSD01、フィナステリド、フレカイニドアセテート、フルコナゾール、酢酸フルドロコルチゾン、フルマゼニル、フルオキセチン、フルタミド、フルバスタチン、フルボキサミンマレアート、フォリトロピンアルファ/ベータ、ホルモテロール、フォシノプリル、フォシノプリルナトリウム、フロセミド、ガバペンチン、ガドジアミド、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドテリロール(gadoteridol)、ガナキソロン、ガンシクロビル、ガントフィバン(gantofiban)、ガストリンCW17イムノゲン、ゲムシタビン ヒドロクロリド、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシンイソトン、ゲピロンヒドロクロリド、ピオグリタゾンヒドロクロリド、ピペラシリンナトリウム、プレコナリル、ポロキサマーCW188、ポサコナゾール、NN304、プラミペキソールジヒドロクロリド、プラバスタチンナトリウム、プレドニゾン、プレガバリン、プリミドン、プリノマスタート(prinomastat)、マレイン酸プロクロルペラジン、バルデコキシブ、バルプロ酸、バルサルタンヒドロクロロチアジド、バルスポダール、バンコマイシンHCL、ベクロニウムブロミド、ベンラファキシンヒドロクロリド、ベラパミルHCL、酒石酸ビノレルビン、ビタミンB12、ビタミンC、ボリコナゾール、ワルファリンナトリウム、キサリプロデン、およびザフィルルカストからなる群から選択される。
【0162】
いくつかの態様において、本発明は化合物IVに関し、Aは、化式で表される。
【化67】

【0163】
いくつかの態様において、本発明は化合物IVに関し、Zは、抗感染症薬、消炎性物質、および抗腫瘍物質から選択され、Aは、化式で表される。
【化68】

【0164】
本発明の方法
本発明のある局面は、哺乳動物において疾患を治療するための方法であって、式I、II、III、またはIVで表される化合物の治療的有効量を前記哺乳動物に投与するステップを含む方法に関する。
【0165】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記疾患は、細菌感染症、ウイルス感染症、癌、または炎症によって特徴付けられる。
【0166】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記疾患は癌である。
【0167】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記哺乳動物はヒトである。
【0168】
いくつかの態様において、本発明は、式I、II、III、またはIVで表される化合物、および薬学的に許容される添加剤を含む製剤に関する。
【0169】
ヒトまたは非ヒト動物の体の磁気共鳴画像を作成する方法であって、磁気共鳴画像法を必要とする被験体の体に、式IIまたはIVで表される化合物を投与し、磁気共鳴画像を作成する方法。
【0170】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記被験体はヒトである。
【0171】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記化合物は式IIで表され、Mは、Gd3+、Mn2+、Fe3+、またはCr3+からなる群から選択される。
【0172】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記化合物は式IIで表され、Mは、Gd3+である。
【0173】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記化合物は式IIで表され、Mは、In−111、Tc−99m、I−123、I−125、F−18、Ga−67、Ga−68、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67、およびCu−64からなる群から選択される。
【0174】
いくつかの態様において、本発明は上記方法に関し、前記化合物は式IIで表され、Mは、Tc−99mである。
【0175】
細菌感染症の治療
式I、II、III、およびIVで表される化合物の抗菌特性は、細菌溶解アッセイ、ならびに、とりわけ、成長阻害アッセイ(例えば、Blondelie et al. (1992) Biochemistry 31:12688に記載されているようなもの)、蛍光ベースの細菌生存能力アッセイ(例えば、Molecular Probes BacLight)、フローサイトメトリーアッセイ(Arroyo et al. (1995) J. Virol. 69:
4095-4102)、および当該技術分野において公知の他の標準的なアッセイを含む他のアッセイによって測定してもよい。
【0176】
微生物標的の成長阻害のためのアッセイを用いて、化合物のED50値、すなわち、試験対象となる微生物サンプルの50%を殺すのに必要な化合物の濃度を導き出すことができる。
【0177】
別法として、本発明の抗微生物化合物による成長阻害は、最小発育阻止濃度(MIC)によって特徴付けられる。それは微生物の細胞成長の阻害を達成するのに必要な化合物の濃度である。そのような値は当該技術分野において、特定の抗微生物物質(例えば、抗生物質)の、特定の生物または生物群に対する有効性を表すものとして公知である。例えば、細菌集団の抗微生物化合物による細胞溶解は、上記のように、最小発育阻止濃度によっても特徴付けられる。それは、生存可能微生物集団を99.9%減少させるのに必要な濃度である。生存可能微生物集団を50%減少させるのに必要な化合物の濃度と定義されるMIC50の値を使用することもできる。好ましい態様において、本発明の化合物は、とりわけ、所望の細菌標的、例えば、メチシリン耐性ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)や連鎖球菌(Streptococcus
pneumoniae)などのグラム陽性菌に対して、MIC値が25μg/mL未満であること、さらに好ましくは7μg/mL未満であること、そしてさらにもっと好ましくは、1μg/mL未満であることを基礎として選択される。
【0178】
本発明の抗微生物化合物の有効性を同定および測定するに有用な別のパラメーターは、化合物の抗微生物活性のカイネティクスの決定である。そのような決定は、抗微生物活性を、時間の関数として測定することによって行うことができる。好ましい態様において、該化合物は、微生物の効率的な溶解をもたらすカイネティクスを表示する。好ましい態様において、該化合物は殺菌性である。
【0179】
さらに、好ましい本発明の抗微生物化合物は、標的微生物に対する選択的毒性、および哺乳動物細胞に対する最小毒性を示す。毒性用量(または「LD50」)の決定は、薬理学分野において公知のプロトコルを用いて行うことができる。本発明の化合物の哺乳動物細胞に対する効果の確認は、組織培養アッセイを用いて行うことが好ましい。例えば、本発明の化合物は、当業者に公知の標準的な方法で評価することができる(例えば、Gootz, T. D. (1990) Clin. Microbiol. Rev. 3:13-31)。哺乳動物細胞に対するそのようなアッセイ方法としては、とりわけ、トリパンブルー排除およびMTTアッセイ(Moore et al. (1994) Compound Research 7:265-269)がある。膜の透過性が変化した時、特定の細胞種が特定の代謝物質を放出する場合(例えば、赤血球の溶解後のヘモグロビンの放出)、その特定の代謝物質を調べてもよい(Srinivas et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:7121-7127)。本発明の化合物は、一次細胞に対して、例えば、ヒト皮膚線維芽細胞(HSF)もしくはウマ胎児腎臓(FEK)細胞培養、または当業者によってルーチンで用いられている他の一次細胞培養を用いて、試験することが好ましい。永久細胞系列(例えば、Jurkat細胞)を用いてもよい。好ましい態様において、対象化合物は、動物、または動物細胞/組織培養に使用するために、少なくとも、部分的に、このような場合にそうであるようなMICまたはED50より少なくとも1オーダー大きい、さらに好ましくは少なくとも2、3、さらには4オーダー大きいLD50を有することに基づいて選択される。すなわち、好ましい態様において、対象化合物が動物に投与される場合、好適な治療インデックスは、10、より好ましくは10より大きい、1000もしくはさらに10,000である。
【0180】
本発明の化合物の抗菌アッセイは、グラム陽性およびグラム陰性微生物の双方に対する細菌活性を測定するために行うことができる。本発明の抗菌物質に感受性の高い典型的なグラム陰性病原体としては、例えば、エシェリキア属(genus Escherichia)、エンテロバクター属(genus Enterobacter)、クレブシエラ属(genus Klebsiella)、セラチア属(genus Serratia)、プロテウス属(genus Proteus)およびシュードモナス属(genus Pseudomonas)の種が含まれる。例えば、対象となる組成物および方法は、感染症のためのレジメンの治療および予防の一環として、大腸菌(E. Coli)、肺炎桿菌(K. peumoniae)、セラチア-マルセッセンス、エンテロバクター-エロゲネスおよびエンテロバクター-クロアカエ (E. aerogenesおよびE. cloacae)、緑膿菌(P. aeruginosa)、ナイセリアメニンギチジス(N. meningitidis)、グループB連鎖球菌、および黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、ジフテリア菌、ガードネレラ-バジナリス、アクチンエトバクター(Actinetobacter spp.)、ボーデル百日咳(Bordella
pertussis)、ヘモフィルス-エジプチウス、インフルエンザ菌、軟性下疳菌、赤痢菌(Serratia spp.)、および瘡プロピオニバクテリウムを含む、最も頻繁に遭遇するグラム陰性およびグラム陽性生物のいくつかによって使用することができる。
【0181】
上記病原体のリストは、例示に過ぎず、限定的であると解釈すべきでない。
【0182】
治療することが可能な状態の例としては、気道および咽頭腔の疾患;耳炎、咽頭炎、肺炎、腹膜炎、腎盂腎炎、嚢状体炎、心内膜炎、全身感染症、気管支炎、関節炎、局所炎症、皮膚の感染症、結膜炎(conjuntivitus)、および人工透析の目的で、手術で作成した、あらゆる血管アクセスの感染症、が挙げられる。
【0183】
好ましい態様において、本発明の抗菌物質は、グラム陽性菌の成長を阻害することができる能力にもとづて選択される。そのようなグラム陽性菌は、以下の種から選択される:ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ペプトコッカス(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、桿菌(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、乳酸桿菌(LactobacilIus)、リステリア(Listeria)、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ユーバクテリウム(Eubacterium)およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)。
【0184】
種々のグラム陽性生物は、敗血症を引き起こし得る。敗血症に関与する最も一般的な生物は、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌性肺炎、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ベータ−溶血性連鎖球菌、および腸球菌であるが、あらゆるグラム陽性生物が関与しうる(例えば、Bone, (1993) J. Critical Care 8:51-59参照)。このように、対象となる組成物および方法は、グラム陽性菌が関与する敗血症の治療処置および予防プログラムの一環として使用しうることが特に意図されている。
【0185】
したがって、ある態様において、S.
aureus は、本発明の化合物を試験/選択する際のグラム陽性微生物のモデルとして使用される。この細菌はまた、臨床的ターゲットとしても意義がある。なぜなら、それは、大半の全身用抗生物質治療に対して屈折率がよいからである。黄色ブドウ球菌は、皮膚、傷および血液感染症を最も高頻度に引き起こし、低気道感染症を2番目の高頻度で引き起こす。そして、該微生物は、免疫無防備状態の収容患者を餌食にする。このように当該化合物は、ブドウ球菌によって引き起こされる感染症、ならびに、結膜炎、外耳の感染症などを治療するために使用することができる。
【0186】
細菌感染症による死亡率および罹病率の増加の最大の原因の1つは、薬物耐性菌の蔓延の増加である。抗生物質耐性の重大な例は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)であり、また、事実上、現在使用されている全ての抗生物質に耐性を持つバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌が出現している。このように、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、当該化合物を選択するための抗生物質耐性モデル生物としても使用されている。好ましい態様において、例えば、MRSAによって引き起こされるかもしれない心内膜炎の治療および/または予防に、本発明の抗菌物質を用いることができる。
【0187】
MRSA感染症の治療にバンコマイシンを使いすぎると、結果として、新たな腸球菌株の出現を引き起こすことになった。腸球菌は、米国で3番目に主流の感染症原因であり、バンコマイシンに耐性を示すものである。エンテロコッカスは、細菌性心内膜炎症例の原因の15%も占めている。それは髄膜炎や、尿管、胃、腸の感染症の原因でもある。これらのバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)によって引き起こされる感染症は、現在のあらゆる治療に奏効しないことが多く、多くの症例が致命的であることがわかっている。したがって、当該化合物は、E.
faecalis 感受性、特に、病院などの臨床現場において見つかっているバンコマイシン耐性分離菌に基づいてアッセイを行うことによって選択することができる。
【0188】
当該組成物もまた、連鎖球菌による感染症の治療のために選択することができる。連鎖球菌種は、多種の病理学的状態と関連することがわかっている。そうした病理学的状態としては、壊疽、産褥感染、亜急性細菌性心内膜炎、敗血性咽頭炎、リウマチ熱、および肺炎がある。したがって、連鎖球菌種に対して活性をもつ物質が非常に必要である。
【0189】
さらに説明すると、大腸菌(E. Coli)や緑膿菌(P.
aeruginosa)は、当該抗菌物質に感受性を持つグラム陰性生物の例である。緑膿菌は、嚢胞性線維症患者における肺の感染症、火傷感染症、眼や尿管の感染症などの状態において、特に問題のある疾患原因である。緑膿菌による感染症は、重篤な敗血症になるかもしれない。さらに、イミペナム耐性緑膿菌が臨床の現場で増加している。腸の病原体性の大腸菌は、乳幼児において下痢、成人において「旅行者下痢症」を含む下痢を引き起こす原因でなる。大腸菌は、侵襲的であり、毒素生成的であり、ときに膀胱炎、腎盂炎、腎盂腎炎、虫垂炎、腹膜炎、胆嚢感染症、敗血症、髄膜炎、および心内膜炎といった致命的な感染症を引き起こす。
【0190】
さらに別の態様において、当該化合物は、赤痢菌(Serratia
spp.)によって引き起こされる感染症の治療に用いることができる。例えば、S.
marcescensは、眼科系および他の局所感染症の原因であり、該細菌を好適な濃度で殺菌する本発明の化合物を同定することを目的としたアッセイにおいて容易に提供され得る。
【0191】
当該化合物はまた、外耳の感染症の治療、または淋病(Niesseria
gonorrhea)やトリコモナス感染症などの性行為感染症の治療に用いることもできる。
【0192】
本発明に関するいくつかの化合物はまた、典型的および非典型的マイコバクテリアおよびピロリ菌に対する活性、ならびに、例えば、マイコプラズマやリケッチアなどの細菌様微生物に対する活性に基づいて選択することができる。したがって、それらは、病原体によって引き起こされる全身性および局所性感染症の予防および化学治療のために、ヒト、および獣医学において特に好適である。マイコバクテリウム-ツベルクローシス、マイコバクテリウム-アフリカヌム、マイコバクテリウム-ウルセランス、マイコバクテリウム-レプレのようなマイコバクテリウムボリス(Mycobacterium
boris)は強い病原体である。マイコバクテリウム-ボビスは、世界中で重大な病原菌(patbogen)となっている。これは、主に家畜において結核を引き起こす。
【0193】
別の態様において、当該組成物は、サルモネラ菌による感染症の治療/予防に用いることができる。サルモネラ菌は、食中毒の原因を引き起こし、吐気、嘔吐、下痢、およびその他致命的な敗血症を引き起こすことになる。例えば、チフス菌は、腸チフス熱の病因物質である。
【0194】
本発明の組成物および方法はまた、赤痢菌による感染症の治療に有用であるかもしれない。志賀赤痢菌を含む赤痢菌は、一般的な水媒介性の病原物質であり、細菌性赤痢ならびに細菌感染症および肺炎の原因となる。米国およびカナダにおいては、ソンネ赤痢菌およびフレクスナー赤痢菌が細菌性赤痢における最も一般的な病因物質となっている。
【0195】
エルシニア属の細菌もまた、当該組成物によって治療することができる病原体である。例えば、エルシニア-エンテロコリチカは、腸の病原体である。この微生物による感染症は、重篤な下痢、胃腸炎、および、細菌感染症、急性腹膜炎、胆嚢炎、内臓膿瘍、および腸間膜リンパ節炎などのその他の感染症を引き起こす。敗血症は、死亡率が50%であると報告されている。ペスト菌は、ヒトにおける鼠径腺腫ペスト、肺ペスト、および敗血性ペストの病原物質である。
【0196】
癌の治療
本発明はさらに、式I、II、IIIまたはIVの化合物を用いて、変性された腫瘍細胞の生存および/または増殖を調整する方法を提供する。そのような腫瘍としては、限定されないが、頭部、頚部、鼻腔、副鼻腔、上咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺、パラガングリオン、膵臓、胃、皮膚、食道、肝臓、および胆管ツリー(biliary tree)、骨、腸、結腸、直腸、卵巣、前立腺、肺、乳房、中枢神経系、または脳の腫瘍がある。
【0197】
炎症性障害の治療
本発明の化合物、組成物および方法は、炎症性疾患や反応、特に、限定されないが、IL−2、IL−5、IL−8、IFN−ガンマ、TNF−アルファを含む炎症性の媒介物質の過剰生成を伴う炎症性疾患や反応を治療するのに有用である。ストア操作された(Store-operated)カルシウム流入によって、炎症性細胞におけるナンバーシグナリング経路が活性化され、その結果、催炎性のサイトカインおよびケモカインが生成され、オータコイド、タンパク質分解酵素および毒性タンパク質などの他の安定な炎症性の媒介物質が放出され、炎症性自己免疫疾患において重要な役割を果たす接着分子やレセプターが含む細胞表面分子をアップレギュレーションされる。重要なカルシウム制御シグナリング分子としては、転写因子NFATおよびNF−カッパB、ならびにストレスキナーゼJNKおよびp38が挙げられる。JNKは、転写因子活性化タンパク質−1(AP−1)のアップレギュレーションにおいて重要な役割を果たし、TNF−アルファ生成に関与する(Minden AとKarin M, Biochim. Biophys. Acta 1333:F85-104,
1997; Lee J C and Young P R, J. Leukoc. Biol. 59:152-7, 1996)。活性化されたT細胞において、NFATは、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−8、IL−13、TNFアルファ、およびGM−CSFの転写調節に必要である(Crabtree G R and Clipstone N A, Annu. Rev.
Biochem. 63:1045-83, 1994)。NF−カッパBは、IL−1、IL−6、IL−8、IFNガンマおよびTNF−アルファ、ならびに細胞接着分子VCAM−1およびICAM−1、IL−2レセプターアルファ鎖、および細胞成長因子c−Mycを含む催炎性サイトカインの転写調節に必須である(Baldwin A S, J. Clin. Invest. 107:3-6, 2001;
Barnes P J and Karin M, N. Engl. J. Med. 336:1066-71, 1997)。AP−1は、IL−2およびマトリクスメタロプロテイナーゼの生成を転写調節する(Palanki M S, Curr. Med. Chem. 9:219-27, 2002)。マスト細胞および好塩基球は、高アフィニティーIgEレセプター(FcイプシロンRI)を発現し、ヒスタミンを合成する。抗原による架橋FcイプシロンRIは、カルシウム流入、顆粒減少、催炎性エイコサノイドの生成を導く。ヒスタミンに加えて、ヒトマスト細胞分泌顆粒も中性のプロテアーゼ、トリプターゼ、キマーゼおよびカルボキシペプチダーゼを含有する。トリプターゼは、線維形成性因子としてされている。マスト細胞および好塩基球は、このようにしてアレルギー性疾患のみならず、肺を含むいくつかの臓器に発症する慢性および線維形成性疾患に影響を及ぼす(Marone G, Int. Arch. Allergy Imnunol. 114:207-17,
1997)。このため、カルシウム流入およびNFAT、NF−カッパB、AP−1、およびマスト細胞/好塩基球脱顆粒化の活性化を効果的にブロックすることができる化合物は、種々の炎症性および自己免疫障害の潜在的な治療を提供する。
【0198】
NF−カッパBなどの転写因子は、細胞外シグナル、または細胞膜に位置するレセプター分子を介して細胞内活性化に変換される細胞間相互作用により活性化される。エンドトキシンなどの細胞性トキシンは、単球におけるカルシウム流入および、炎症性の応答の発生の重要なステップであるNF−カッパBの核のトランスロケーションを誘導するということが提案されている。急性の状態においては、エンドトキシン誘導性の炎症性プロセスは、敗血症などの重篤な医学的病態を引き起こし得る。NF−カッパB活性化後転写される公知の遺伝子の数は容易に増加する。これらの遺伝子は、サイトカイン(IL−1、TNF−アルファなど)、ケモカイン(例えば、IL−8)、成長因子、細胞リガンド、および接着分子を含み、これらの遺伝子の多くは、リウマチ性関節炎(RA)の発生に関与している。これまで、多くの他の炎症性障害が、NF−カッパBの活性に関連すると考えられている(最近のレビューとしては、Yamamoto YとGaynor R B, Curr. Mol. Med. 1(3):287-96,
2001; Baldwin A S, J. Clin. Invest. 107:3-6,
2001参照)。例えば、肺炎球菌は、耳炎の耳に損傷を引き起こし、また、これは細菌性髄膜炎にも関連する。傷害の病因は、細胞壁および肺剥離に対する患者の応答性に関する。特に抗生物質誘導性の細菌溶解中の細胞壁成分の放出は、白血球の流入および、それに続く組織傷害を引き起こす。この反応のためのシグナル伝達カスケードは、限定されるようになってきており、それは、CD14、Toll様レセプター、NF−カッパB、およびサイトカインの生成を誘導する。耳炎の後遺症は、肺炎球菌が誘導する炎症の効果的な遮断によって減少させることができる。発明者らは、SOC阻害物質がJurkat細胞におけるNF−カッパBの活性化の遮断に有効であること、したがって、NF−カッパB活性化が重要な役割を果たす、RAやクローン病などの炎症性の障害の潜在的な治療であることを証明してきた。
【0199】
活性化T細胞(NFAT)タンパク質の核因子は、その活性化がカルシノイリン、カルシウム依存性プロテインホスファターゼによって制御される、転写因子のファミリーである(Rao A et al., Annu. Rev. Immunol. 15:707-47,
1997; Stankunas K et al., Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 64:505-16, 1999)。サイトカイン遺伝子発現の誘導物質としてT細胞中にもともと確認されていたNFATタンパク質は、免疫系の外側の細胞において種々の役割を果たす(Horsley V and Pavlath G K, J. Cell Biol.
156:771-4, 2002; Graef I A et al., Curr. Opin. Genet. Dev. 11:505-12, 2001)。近年、免疫蛍光/共焦点顕微鏡検査法を用いることによって、サイクロスポリンAおよびタクロリムスが培養されたケラチノソーム中のカルシノイリンおよびNFATの核転座を遮断することがわかった(Al-Daraji W I et al., J. Invest. Dermatol.
118:779-88, 2002)。その結果、正常皮膚および乾癬皮膚における種々の細胞タイプがカルシノイリンおよびNFAT1を発現することがわかったが、発現は特にケラチノソームにおいて顕著であった。主要なサイクロスポリンAおよびタクロリムス結合タンパク質シクロホラーゼAおよびFKBP12も、皮膚の非免疫細胞、ケラチノソームにおいて発現した。NFAT1は、正常な基底の表皮性ケラチノソームにおいては主として核であった。上記基底ケラチノソームが病変部、および正常皮膚に比べて程度は低いが、非病変性の表皮内において、NFAT1の核局在性の増加が観察された。このことは、乾癬表皮ケラチノソームにおけるカルシノイリンの活性化を増加させた。ケラチノサイト分化を誘導するアゴニスト、特に、細胞内カルシウムから作られる、12−O−テトラデカカルボニル−ホルボル−13−酢酸塩(TPA)およびイオノマイシンは、ケラチノソーム内のNFAT1およびカルシノイリンの核転座を誘導し、サイクロスポリンAまたはタクロリムスを用いた予備治療によって阻害された。対照的に、ヒト皮膚線維芽細胞においては、TPAおよびイオノマイシンまたはTPAは、核に関連するNFAT1の比率に有意な変化をもたらさなかった。これらの結果は、カルシノイリンがNFAT1の核転座を誘導することによって、ヒトケラチノソームにおいて、機能的に活性的であること、および皮膚のNFAT1核転座の調節が細胞タイプ特異的であることを示すものである。表皮性ケラチノソームのこの経路の阻害は、乾癬などの皮膚疾患におけるサイクロスポリンAおよびタクロリムスの治療効果で、ある程度説明できるかもしれない。NFAT活性を効果的に阻害することが可能なSOC阻害物質は、乾癬などの炎症性障害のための代替的な薬理学的治療を提供する。
【0200】
マスト細胞および/または好塩基球は、即時の超過敏反応、寄生虫や新生物に対する宿主の反応、脈管形成、組織リモデリング、および免疫学的非特異性の炎症性線維症を含む広範な生物学的反応の発現に関与してきた。近年の所見では、マスト細胞がそのような生物学的反応に影響を及ぼすことによる重要なメカニズムが、広いパネルの多機能性サイトカインの生成を介して生物学的反応に影響を及ぼすことが示唆されている。対照的に、好塩基球がサイトカインを生成することができる程度は不確定的である(Galli S J et al., Curr. Opin. Immunol. 3:865-72,
1991)。マスト細胞関連性の媒介物質は、通常、細胞質顆粒中に保存され、エキソサイトーシスに伴って放出される予備生成された媒介物質と、保存されていないが、細胞の適切な刺激の後にのみ、生成され、分泌される新たに合成された媒介物質の2つに分類される。発明者は今般、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)/カケクチンが、新しいタイプのマスト細胞関連性媒介物質を表すことを報告する。そこでは、依存性マスト細胞が活性化した結果、保存された予備形成されたサイトカインが、急速に放出され、その後、新たに形成されたTNFアルファが大量に合成され、持続的に放出される。発明者らはまた、マスト細胞が欠けているマスト細胞再構成性、遺伝的マスト細胞依存性WBB6F1−W/W1のマウスにおいてよりも、正常マウスのIgEで感作された皮膚部位において、特異的な抗原によるチャレンジによって、より高いレベルのTNFアルファmRNAが誘導されることを証明している。これらの所見は、IgE依存性反応中の、(TNFアルファ)/カケクチンの生物学的に有意なソースとしてのマスト細胞を確認し、マスト細胞のFCイプシロンRを介してのが急速かつ持続的なサイトカインの放出がそれによって説明される機序を定義する(Gordon J R and Galli S J, J. Exp. Med.
174:103-7, 1991)。
【0201】
マスト細胞は、Th2細胞およびIgEに関連する免疫反応における重要なエフェクター細胞として広く認められている。近年の研究によれば、それらはまた先天的な免疫性の発現に有意に寄与する。さらに、補体およびマスト細胞に依存する急性細菌感染症のモデルでの生存率は、キット(kit)リガンド(幹細胞因子)によるマウスの長期の治療によって向上させることができる。このことは、そのような治療がマスト細胞の数および/または機能に及ぼす影響が少なくとも一因となっている。これらの所見は、マスト細胞が天然の免疫性における宿主の防御の重要な成分を表すことができるのみならず、この環境でのマスト細胞の機能が治療の端部で操作できることを示唆するものである(Galli S J et al., Curr. Opin. Immunol. 11:53-9,
1999)。マスト細胞脱顆粒現象による催炎性の媒介物質の放出は、カルシウム依存性プロセスであると考えられている。マスト細胞脱顆粒現象を妨害するSOC阻害物質などの化合物は、マスト細胞が関与する炎症性、アレルギー性および免疫性障害のための新規な潜在的な医学治療を提供する。
【0202】
いくつかの態様において、化合物、組成物および方法は、NFAT(活性化T細胞の核因子)などのカルシウム流入の下流のリンパ球活性化経路の活性が増加することによって生じるあらゆる障害の治療に有用である。いくつかの態様において、該化合物は、限定されないが、マスト細胞脱顆粒現象および白血球の分泌、ならびに催炎性の接着分子、種々の非造血細胞(内皮細胞および上皮細胞を含む)による、ケモカインおよびサイトカインのカルシウム依存性同化作用を含む、他のカルシウム依存性プロセスによって生じる炎症の治療にも有用である。
【0203】
さらに、本発明の化合物、組成物および方法は、炎症性の肺疾患もしくは反応(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、および成人呼吸障害症候群)、炎症性の筋骨格疾患もしくは反応(例えば、運動誘導性傷害、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、骨粗鬆症および骨関節症)、炎症性胃腸疾患、または泌尿生殖器の反応(例えば、全腸炎、胃炎、クローン病、間質性膀胱炎、膣炎、および潰瘍性大腸炎)、自己免疫疾患もしくは反応(例えば、II型糖尿病、炎症性の腸疾患、および乾癬)、過敏性腸症候群、神経性炎症、並び移植の拒絶反応を予防および/または治療するために用いることができる。
【0204】
本発明の化合物、組成物および方法は、炎症性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触性皮膚炎およびアレルギー性皮膚炎)、高増殖性皮膚疾患(例えば、乾癬、基底細胞カルチノーマ および扁平上皮細胞カルチノーマ)、および皮膚刺激の予防および/または治療に用いることもできる。そのような状態は、当業者に公知であり、例えば、Champion et al.、Eds. (1998) "Textbook of Dermatology"、Blackwell
Science、または、American Academy of Dermatology (例えば、http://www.dermfnd.org/参照)や、American
Cancer Society (例えば、http://www.cancer.org/参照)などの多くの組織によって提供される情報に記載がある。さらに本発明の化合物および組成物は、これらの疾患または状態に関連するあらゆる兆候、例えば、炎症、発赤、かゆみ、にきび、外被、瘡蓋、乾燥、火傷、毛細血管出血、体液、例えば、膿、分泌、膿疱、水疱形成、発疹、傷、スケーリング、フケ、丘疹、プラーク、病変、厚化、脱粒、こぶ、フレーキング、出血、圧痛、切り傷、かすり傷、痛み、急激な腹痛、刺激、腫れ、小疱形成、小胞、隆起、瘢痕、皺、そばかす、黄変、血管拡張、正常機能の損失、などを治療するために用いることができる。
【0205】
本発明の化合物、組成物、および方法はまた、喘息やアレルギー性鼻炎などの粘膜皮膚の炎症性疾患、ならびにそれらに関連する徴候を予防および/または治療するのに有用である。そのような状態に関する記載は、Asthuma and Allergy Foundation of America (例えば、http://www.aafa.org/参照)に見出すことができ、当業者に公知である。喘息は、気管支のパラドキシカルな狭窄が呼吸困難をきたすことをを特徴とする。喘息に関連する典型的な徴候としては、例えば、ゼーゼーいうこと、呼吸困難、胸の締め付け、空咳、および運動後の息切れが挙げられる。本発明の化合物はまた、アレルギー性鼻炎(枯草熱)を治療するために用いることができる。アレルギー性鼻炎は、アレルギー性の刺激に反応して、鼻経路中に炎症性反応が起こるものである。アレルギー性鼻炎に関連する徴候としては、例えば、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、鼻汁、および口や耳の蓋(roof)のかゆみなどが挙げられる。
【0206】
本発明の化合物、組成物、および方法はまた、皮膚の加齢、特に、外在的な皮膚の加齢、ならびに皮膚の加齢に伴うあらゆる徴候を予防および/または治療するために使用することができる。そのような徴候は、例えば、皺および/または細かい線の出現、皮膚および皮下組織の緩み、皮膚のたるみ、表皮細胞の萎縮、皮膚の乾燥、皮膚弾力の低下、毛細血管の脆弱化、創傷治癒にかかる時間の増加、色素沈着の増加および低下による色素の変化、種々の良性、前悪性、および悪性腫瘍の出現などがあげられる。さらに、組織学的レベルにおいて、加齢の結果、皮膚の間伐や劣化、ならびに細胞および血液供給の減少および平坦化が、真皮と表皮の間の結合部分で生じる。
【0207】
さらに、本発明の化合物、組成物、および方法は、皮膚の光損傷およびあらゆる関連する徴候を予防および/または治療するために使用することができる。皮膚の光損傷は、長時間、繰り返し紫外線にさらされることによって、加齢に伴って生じるものである。皮膚の光損傷の徴候は、例えば、皺、黄化、点の出現および斑点形成、弾力線維症、ラインの出現、固い、または乾燥した皮膚の出現、および皮膚の早期老化が含まれる。組織学的レベルにおいては、皮膚の光損傷は、もつれた、厚みを増した、異常な弾力線維、コラーゲンの減少、およびグリコサミノグリカン成分の上昇に表れる(Tanaka et al. Arch. Dermatol. Res. 285:352-355,
2000参照)。
【0208】
本発明の化合物、組成物、および方法は、例えば、経皮または経粘膜薬物送達、刺激性薬物送達エンハンサーまたは刺激性薬物によって引き起こされる粘膜皮膚の炎症や過敏症の予防および/または治療に有効である。本発明の化合物、組成物、および方法は、コルチコステロイド、サリチレート、コルヒチン、パラアミノフェノール、プロピオン酸、ピロキシカム、ケトロラック、ケトプロフェン、シクロオキシゲナーゼ阻害物質、インドメタシンなどの消炎性物質の力価を高めるための添加剤として使用することができる。
【0209】
さらに別の局面において、本発明は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎または喘息などのアトピー性疾患を治療するための方法であって、HMG CoAリダクターゼ阻害物質(オープンチェーン、ラクトンまたはそれらの混合物)を患者に投与し、それによって、アトピー性疾患を治療することを含む方法を提供する。HMG−CoAリダクターゼ阻害物質は、限定されないが、メバスタチン(mevastatin)、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ダルバスタチン(dalvastatin)、セリバスタチンおよびアトルバスタチンが含まれる。HMG CoAリダクターゼ阻害物質(オープンチェーン、ラクトンまたはそれらの混合物)はまた、炎症性の皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触性皮膚炎およびアレルギー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患および成人呼吸障害症候群)、高増殖性皮膚疾患(例えば、乾癬、基底細胞カルチノーマおよび扁平上皮細胞カルチノーマ)、ならびに皮膚刺激の予防および/または治療に用いることもできる。さらに、HMG CoAリダクターゼ阻害物質(オープンチェーン、ラクトンまたはそれらの混合物)は炎症性胃腸疾患、または泌尿生殖器の反応、例えば、炎症性の腸疾患、全腸炎、胃炎、膣炎、間質性膀胱炎の予防および/または治療に用いることもできる。
【0210】
ウイルス感染症の治療
本発明の抗ウイルス物質(式I、II、IIIおよびIVの化合物、および薬学的に許容されるそれらの塩)は、水痘−帯状疱疹ウイルス、トガウイルス群、サイトメガロウィルス(CMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ピコルナウイルス、ライノウイルス、ヒトパピローマウイルス(Human papillona viruses)および肝炎ウイルス、その他に加えて、疱疹ウイルス(特に免疫学的に定義された単純疱疹ウイルスHSV−1およびHSV−2)、およびポリオウイルス(3つの全ての面学的に区別可能なそれらのタイプ)による感染症を治療するために用いることができる。
【0211】
本発明の抗ウイルス物質は、哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、家畜、イヌ、および齧歯類)に適する。投与経路は通常、経口または非経口であるが、抗ウイルス物質を内部ウイルス、外部ウイルス感染症のいずれかを治療するために用いられるかによって、局所投与、または経鼻投与などの他の投与経路によって投与することもできる。局所投与は全身治療のために用いることができる。
【0212】
薬学的組成物
別の局面において、本発明は、1以上の薬学的に許容される単体(添加物)および/または希釈剤とともに製剤される上記化合物の治療的有効量を含む薬学的に許容される組成物を提供する。下記に詳細に示すように、本発明の薬学的組成物は、固体もしくは液体剤型で投与するために具体的に製剤することができる。下記に適用されるものを含む。(1)経口投与、例えば、飲薬(水性もしくは非水性溶液、または懸濁液)、錠剤(例えば、頬側、舌下および全身吸収を目標としたもの)、ボーラス、粉末、顆粒、舌に投与するためのパスタ剤;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋内、静脈内もしくは硬膜外注射、例えば、無菌溶液もしくは懸濁液、または持続性放出製剤;(3)局所投与、例えば、クリーム、軟膏、または徐放パッチ、または皮膚に適用されるスプレー;(4)膣内もしくは腸内投与、例えば、ペッサリー、クリームもしくは泡剤;(5)舌下投与;(6)眼内投与;(7)経皮投与;または(8)経鼻投与。
【0213】
本明細書において用いられているフレーズ「治療的有効量」は、化合物、材料、または本発明の化合物を含む組成物の、少なくとも動物の細胞のサブポピュレーションにおいて、あらゆる医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で、なんらかの所望の治療的効果を生じさせるのに有効な量を意味する。
【0214】
本明細書において用いられている「薬学的に許容される」というフレーズは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応もしくは他の問題、または合併症を引き起こすことなく、ヒトおよび動物の組織に接触させて用いるのに適した、合理的な利益/リスク比率をもたらす化合物、材料、組成物および/または剤型を意味する。
【0215】
本明細書において用いられている「薬学的に許容される担体」というフレーズは、対象となる化合物を1つの臓器から、または体の一部から、他の臓器または体の一部へ運ぶ、または輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物、または液体もしくは固体の充填剤などの賦形剤、希釈剤、添加剤、製造補佐(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、カルシウム、もしくはステアリン酸亜鉛、もしくはステアリン酸)、または材料をカプセル化する溶媒を意味する。各担体は、製剤の他の成分と相溶性であるという意味で、「許容可能」でなくてはならず、患者に対して有害であってはならない。薬学的に許容される担体として機能することができる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなど;(4)粉末化されたトラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂や座剤用ワックスなどの添加剤;(9)ピーナッツオイル、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブオイル、コーン油および大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱因子を含まない水;(17)等張塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水化物;ならびに(22)薬学的製剤に採用される他の非毒性相溶性物質が含まれる。
【0216】
上記したように、本発明化合物のいくつかの態様は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含有し、したがって、薬学的に許容される酸を用いて薬学的に許容される塩を作製することができる。この意味における用語「薬学的に許容される塩」は、相対的に非毒性の、本発明の化合物の無機および有機酸添加塩を言う。これらの塩は、賦形剤の投与または剤型製造プロセスにおいて、または精製された本発明の化合物をその遊離塩基形態において個別に好適な有機もしくは無機の酸と反応させ、続く精製の間に形成された塩を単離させることによってin situ で調製することができる。代表的な塩としては、水素酸塩、ヒドロクロリド硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシラート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチレート(napthylate)、メシラート、グルコヘプトン酸、ラクトビオネート(lactobionate)、およびラウリルスルフォン酸塩などが含まれる(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19参照)。
【0217】
対象となる化合物の薬学的に許容される塩としては、従来の非毒性の塩、例えば、非毒性の有機もしくは無機酸からのまたは化合物の4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、そのような従来の非毒性塩としては、ヒドロクロリド、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸由来のもの、および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタン二スルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製された塩が含まれる。
【0218】
別の場合において、本発明の化合物は、1以上の酸性官能基を含有し、したがって、薬学的に許容される塩基を用いて薬学的に許容される塩を作製することが可能である。これらの例における用語「薬学的に許容される塩」は、相対的に非毒性の、本発明の化合物の無機および有機塩基添加塩を言う。これらの塩は同様に、賦形剤の投与または剤型製造プロセスにおいて、または精製された本発明の化合物をその遊離塩形態において、個別に好適な塩基、例えば、薬学的許容される金属カチオンのヒドロキシド、カーボネートまたは重炭酸塩と、アンモニア、または薬学的に許容される有機1級アミン、2級アミン、もしくは3級アミンとを反応させることによってin situ で調製することができる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩などがある。塩基添加塩を作製するために有用な代表的な無機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、Berge et al.,の上掲文献参照)。
【0219】
湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料および香味剤、防腐剤および抗酸化剤もまた組成物中に含むことができる。
【0220】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システインヒドロクロリド、ナトリウム重硫酸塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レクチン、プロピルプロピルガレート、アルファトコフェノール、など、ならびに(3)メタルキレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、などが含まれる。
【0221】
本発明の製剤は、経口、鼻腔内、局所(頬側および舌下投与を含む)、直腸内、膣内、および/または非経口投与に好適なものを含む。該製剤は、都合よく単一の剤型で存在してもよく、また、薬学の分野において公知の方法によって調製されてもよい。担体材料とともに組み合わされて単一の剤型を成す活性成分の量は、治療を受ける患者、特定の投与形態によって変わる。担体材料とともに組み合わされて単一の剤型を成す活性成分の量は、通常、治療効果を生み出す化合物の量である。一般的に、100%中、この量は、約0.1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは、約10%〜約30%の活性成分の量となるであろう。
【0222】
いくつかの態様において、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、胆汁酸などのミセル形成剤、およびポリエステルやポリ無水物などのポリマー担体から選択される添加剤、ならびに本発明の化合物を含む。いくつかの態様において、上記製剤は、本発明の化合物に経口の生物学的利用可能性を付与する。
【0223】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、担体および任意に1以上の副成分と結合させることを含む。一般的に、該製剤は、均一かつ緊密に本発明の化合物を液体担体もしくは細かく分割された固体担体もしくはその両方と結合させることによって、さらに必要であれば、その生成物を形づくることによって、調製される。
【0224】
経口投与に好適な本発明の製剤としては、カプセル、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ(香料基剤、通常は、スクロースおよびアラビアゴムもしくはトラガカントを用いる)、粉末、顆粒、または水性もしくは非水性溶液または懸濁液、または油中水または水中油液体エマルジョン、またはエリキシル剤もしくはシロップ、または香錠(ゼラチンやグリセリンなどの不活性基剤、または、スクロースやアラビアゴムを用いる)、および/またはマウス含嗽液などがある。それぞれは、活性成分として所定量の本発明の化合物を含有している。本発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤またはパスタ剤として投与することもできる。
【0225】
経口投与のための本発明の固体剤型(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣丸、粉末、顆粒など)においては、活性成分は、クエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウム、および/または下記のうちのいずれかといった1以上の薬学的に許容される担体と混合されている。(1)充填剤または拡張剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴム;(3)湿潤剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモやタピオカのデンプン、アルギン酸、いくつかのケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、およびポロキサマーやラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアリン酸、および非イオン界面活性剤;(8)吸着剤、例えば、カオリンやベントナイト粘土など;(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびそれらの混合物;(10)着色剤;ならびに、(11)徐放剤、例えば、クロスポビドン(crospovidone)またはエチルセルロース。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合、薬学的組成物は、緩衝剤を含んでもよい。同様の種類の固体組成物は、ラクトースや乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような添加剤を用いた、ゼラチン軟カプセルおよびゼラチン硬カプセルにおいて充填剤として用いることができる。
【0226】
錠剤は、任意に1以上の副成分を用いて、圧縮または成形によって作製することができる。圧縮された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレート、または架橋されたナトリウムカルボキシメチルセルロース)、表面活性剤または分散剤)を用いて調製することができる。成形された錠剤は、好適な機械の中で、不活性液体希釈剤で湿らされた粉末化合物の混合物を成形することによって作製することができる。
【0227】
本発明の薬学的組成物の錠剤および他の固体剤型、例えば、糖衣丸、カプセル剤、丸薬、および顆粒は、任意に刻みをつけてもよいし、または例えば、腸溶コーティングや薬学的製剤の技術分野において公知の他のコーティングなどのコーティングやシェルによって調製してもよい。それらはまた、例えば、所望の放出プロファイルを提供するためのヒドロキシプロピルメチルセルロースや他のポリマー基質、リポソームおよび/または小球体を、比率を変えて用いて、その内部の活性成分を徐放または制御された放出させるように製剤することもできる。それらは、急速に放出が行われるように製剤することもできる(例えば、フリーズドライ)。それらは、例えば、細菌捕獲フィルターで濾過することによって、または滅菌水に溶解させることができる滅菌固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって、または使用直前にいくつかの他の滅菌注射可能媒体を用いて、滅菌することができる。これらの組成物は、任意に不透明化剤を含有してもよく、好ましくは、胃腸管の特定の部分において、任意に徐放によって、活性成分のみを放出する組成物にしてもよい。使用可能な埋め込み組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスがある。活性成分はまた、適切であれば、1以上の上記添加剤を用いて、マイクロカプセル化の形状で作製することもできる。
【0228】
本発明の化合物の経口投与用液体剤型は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む。活性成分に加えて、該液体剤型は、当該技術分野において一般的に用いられる不活性の希釈剤、例えば、水もしくは他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、落花生油、胚芽油、オリーブオイル、ひまし油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物が含まれる。
【0229】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、香料、着色剤、香料および防腐剤などのアジュバントも含むこともできる。
【0230】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化されたイソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天およびトラガカント、ならびにその混合物のような懸濁化剤を含有することができる。
【0231】
本発明の直腸投与または膣投与用の薬学的組成物の製剤は、1以上の本発明の化合物を、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックスもしくはサリチレートを含み、室温では固体であるが、体温では液体となり、したがって、直腸もしくは膣腔では液体となり活性化合物を放出させる、1以上の好適な非刺激性の添加剤もしくは担体と混合させることによって調製され得る坐剤である。
【0232】
膣内投与に好適な本発明の製剤はまた、当該技術分野において適切であることが既知の担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、パスタ剤、泡剤またはスプレー製剤が含まれる。
【0233】
局所または経皮投与用の本発明の化合物の剤型は、粉末、スプレー、軟膏、パスタ剤、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性化合物は、必要かもしれない、薬学的に許容される担体、およびあらゆる防腐剤、緩衝剤、もしくは噴射剤と、無菌条件の下で混合することができる。
【0234】
軟膏、パスタ剤、クリームおよびゲルは、本発明の化合物に加えて、動物油および植物油、オイル類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、珪酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの添加剤を含有することができる。
【0235】
粉末およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの添加剤を含有することができる。スプレーは、さらに、クロロフルオロカーボネートなどの通常の噴射剤、およびブタンやプロパンなどの揮発性非置換型炭化水素を含有することができる。
【0236】
経皮パッチは、本発明の化合物の体へのコントロールされた送達を提供するという更なる利点を有する。そのような剤型は、適切な媒体中に化合物を溶解させるか、または分散させることによって作製することができる。皮膚を介しての化合物の流動を増加させるために吸収増強剤を用いることもできる。そのような流動の速度は、速度制御膜を設けるか、またはポリマー基質またはゲル中に化合物を分散させることによって制御することができる。
【0237】
眼科用製剤、眼内軟膏、粉末、溶液なども、本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0238】
非経口投与に好適な本発明の薬学的組成物は、1以上の本発明の化合物を、1以上の薬学的に許容される無菌の等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルジョン、または使用直前に無菌の注射可能溶液もしくは分散剤に再構成し得る無菌の粉末と組み合わせて含む。それは、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を、予定されているレシピエントの血液と等張にするための溶質、または懸濁化剤もしくは硬化剤を含有することができる。
【0239】
本発明の薬学的組成物に用いることができる好適な水溶性および非水溶性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および好適なそれらの混合物、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いることによって、分散剤の場合、必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0240】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散などのアジュバントを含むこともできる。対象となる化合物による微生物の活動の阻害は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどを含むことによって確実に行うことができる。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含むことも望ましいかもしれない。さらに、注入可能な剤型の持続性吸収は、アルミニウムモノステアリン酸やゼラチンなど、吸収を遅らせる物質を含むことによってもたらされる。
【0241】
いくつかのケースにおいて、薬物の効き目を持続させるために、皮下または筋内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性の低い結晶性もしくは非結晶性の液体懸濁剤を用いることによって達成してもよい。そのとき、薬物の吸収速度は、溶解の速度に依存し、ひいては、結晶サイズおよび結晶の形状に依存する。別法として、非経口的に投与される薬物の吸収を遅らせることは、油性賦形剤中に薬物を溶解もしくは懸濁させることによって達成することができる。
【0242】
注射可能なデポー製剤は、対象となる化合物を、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生物分解性のポリマー中でマイクロカプセル基質を作製することによって作製することができる。薬物とポリマーの比率、および用いられる特定のポリマーの性質によって、薬物の放出速度を制御することができる。他の生物分解性のポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射可能製剤はまた、体組織に相溶性のリポソームまたはマクロエマルジョン中に薬物をエントラップすることによって調製することができる。
【0243】
本発明の化合物を調合薬として、ヒトおよび動物に投与するとき、それ自身または、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する薬学的組成物として投与される。
【0244】
本発明の調剤は、経口的、非経口的、局所的、または直腸的に投与される。それらはもちろん、各投与経路のために好適な形状で付与される。例えば、それらは、錠剤またはカプセル形状、注射、吸入剤、眼内ローション、軟膏、坐剤などの、注射、注入もしくは吸入による投与、および坐剤による直腸投与によって投与される。経口投与が好ましい。
【0245】
本明細書において用いられているフレーズ「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、経腸および局所投与以外の投与形態、通常は注射による投与を意味し、それは、限定されないが、静脈内、筋内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、ならびに組織内に注射および注入される。
【0246】
本明細書において用いられている「全身投与」、「全身に投与される」、「末端投与」および「末端に投与される」というフレーズは、化合物、薬物または他の物質の、中枢神経系に直接投与しない投与で、患者の系に入り、代謝などのプロセスを経るような投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0247】
これらの化合物は、治療のために、ヒトおよび他の動物に、経口、経鼻(例えば、スプレーによる)、経直腸、経膣、非経口、嚢内、および局所(粉末、軟膏または滴剤、頬側および舌下を含む)を含めたあらゆる好適な投与経路によって投与される。
【0248】
選択された投与経路とは無関係に、好適な水和された形状で用いられ得る本発明の化合物、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の、従来の方法によって、薬学的に許容される剤型に製剤される。
【0249】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者の所望の治療的反応、組成物、および投与形態を、患者に対して毒性をもたらさずに達成するのに有効な活性成分の量を取得するために変化させることができる。
【0250】
選択された用量レベルは、用いられた本発明の特定の化合物、またはエステル、塩もしくはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられた特定の化合物の排出または代謝の速度、吸収時間および程度、治療の継続時間、用いられた化合物と組み合わせて用いられる他の薬剤、化合物、および/または材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、健康状態、全身的な健康状態、および病歴、および当該技術分野において公知の同様のファクターを含む種々のファクターに依存する。
【0251】
通常の技量を有する内科医または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、薬学的組成物中において用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なものより低いレベルで開始し、所望の効果を達成するため徐々に用量を増加させることができる。
【0252】
通常、本発明の化合物の好適な1日用量は、治療効果を達成するために有効な最低限の用量となる化合物の用量である。そのような有効用量は、通常上記のファクターに依存する。通常、ある患者に対する本発明の化合物の経口、静脈内、脳室内および皮下投与の用量は、指示さた鎮痛剤効果に用いられる場合、体重1kgあたり、1日0.0001〜約100mgであろう。
【0253】
望ましければ、活性のある化合物の1日の有効用量は、1日を通して適切な間隔で、任意にユニット剤型で、別個に投与される、2、3、4、5、6またはそれ以上のサブ用量として投与してもよい。
【0254】
本発明の化合物は単独で投与することができるが、該化合物は、薬学的製剤(組成物)として投与することが好ましい。
【0255】
本発明の化合物は、他の薬物と同様に、ヒト医学または獣医において使用されるあらゆる都合のよいやり方で、投与のために製剤してもよい。
【0256】
別の局面において、本発明は、治療的有効量の1以上の上記対象となる化合物を含み、1以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤ととも製剤される薬学的に許容される組成物を提供する。下記に詳細に示すように、本発明の薬学的組成物は、固体もしくは液体剤型で投与するために特別に製剤することができる。下記に適用されるものを含む。(1)経口投与、例えば、飲薬(水性もしくは非水性溶液、または懸濁液)、錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌に投与するためのパスタ剤;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋内、静脈内もしくは硬膜外注射、例えば、無菌溶液もしくは懸濁液、または持続性放出製剤;(3)局所投与、例えば、クリーム、軟膏、または皮膚、肺もしくは粘膜に適用するスプレー;または、(4)膣内もしくは腸内投与、例えば、ペッサリー、クリームもしくは泡剤;(5)舌下投与または頬側投与;(6)眼内投与;(7)経皮投与;または(8)経鼻投与。
【0257】
用語「治療」は、予防、治療および治癒をも含むことが意図される。
【0258】
この治療を受ける患者は、霊長類、特にヒトおよび他の哺乳動物、例えば、ウマ、家畜、ブタおよびヒツジなど、ならびに家禽および一般的なペット動物を含んだ、治療を必要とするあらゆる動物である。
【0259】
本発明の化合物は、そのまま、または薬学的に許容される担体との混合物において投与することができ、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグルコシドおよびグリコペプチドなどの殺菌薬と組み合わせて投与することもできる。したがって、組み合わせの治療は、引き続いて投与が行われたとき、最初の投与の治療効果が全て消失してしまわないように、連続的、同時、および別個に化合物を投与することを含む。
【0260】
本発明の活性な化合物の、動物の餌への添加は、活性な化合物の治療的有効量を含有する適切な飼料プレミックスを調製し、そのプレミックスを完全な糧食に組み込むことによって達成することができる。
【0261】
別法として、中間濃縮物または活性成分を含有する餌補充剤を餌に混合させることができる。そのような餌プレミックスおよび完全な糧食を調製し、投与する方法は、参照文献に記載されている(例えば、"Applied Animal Nutrition", W.H.
Freedman and CO., San Francisco, U.S.A.,
1969 or "Livestock Feeds and Feeding" O and B books, Corvallis,
Ore., U.S.A.,
1977)
【0262】
ミセル
近年、薬学業界では、いくつかの親油性(水に不溶性)の薬剤のバイオアベイラビリティーを向上させるために、マイクロ乳化技術を導入している。その例として、トリメトリン(Trimetrine)(Dordunoo, S. K., et al., Drug Development and
Industrial Pharmacy, 17(12), 1685-1713, 1991)、およびREV 5901 (Sheen, P. C., et al., J Pharm Sci 80(7), 712-714,
1991)がある。とりわけ、マイクロ乳化は、循環系ではなく、リンパ系に優先的に直接吸収させることによって、それによって、肝臓をバイパスし、肝胆管循環における化合物の破壊を阻止することによって、バイオアベイラビリティーを向上させる。
【0263】
本発明の一局面において、製剤は、本発明の化合物および少なくとも1つの両親媒性担体から形成されるミセルを含有する。ミセルは、平均直径が約100nmである。より好ましい態様においては、平均直径が約50nm未満のミセルを提供する。さらに好ましい態様においては、平均直径が約30nm未満、さらには20nm未満のミセルを提供する。
【0264】
全ての好適な両親媒性担体を考慮することができるが、現時点で好ましい担体は、通常Generally-Recognized-as-Safe (GRAS)状態のものであり、本発明の化合物を溶解し、溶液が複合体化された水相(例えば、ヒト胃腸管において認められる)に接触する後の段階において、それをマイクロ乳化することができるものである。通常、これらの要件を満足する両親媒性の成分は、HLB(親水性と新油性のバランス)値が2〜20であり、それらの構造が直鎖脂肪族ラジカルをC-6〜C-20の範囲で含有している。例としては、ポリエチレングリコール化された脂肪グリセリドおよびポリエチレングリコールがあげられる。
【0265】
特に好ましい両親媒性担体は、飽和およびモノ不飽和ポリエチレングリコール化された脂肪酸グリセリド、例えば、完全にまたは部分的に水素化された種々の植物オイルから得たものである。そのようなオイルは、対応する脂肪酸の、トリ、およびモノ脂肪酸グリセリド、ならびにジおよびモノポリエチレングリコールエステルからなることが有利である。そして、特に好ましい脂肪酸組成物は、カプリン酸4〜10%、カプリン酸3〜9%、ラウリン酸40〜50%、ミリスチン酸14〜24%、パルミチン酸4〜14%、およびステアリン酸5〜15%を含有している。別の有用なクラスの両親媒性担体は、特に、エステル化されたソルビタンおよび/またはソルビトールを、飽和もしくはモノ不飽和脂肪酸(SPAN−シリーズ)、または対応するエトキシ化アナログ(TWEEN−シリーズ)とともに含む。
【0266】
市販の両親媒性担体を特に考慮する。それには、Gelucire-series、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(全て、Gattefosse Corporation、Saint Priest、Franceによって製造および流通されている)、PEG−モノ−オレイン酸塩、PEG−ジ−オレイン酸塩、PEG−モノ−ラウリン酸塩、およびジラウリン酸塩、レシチン、Polysorbate 80など(米国および世界中の多数の企業によって製造および流通されている)が含まれる。
【0267】
ポリマー
本発明において使用するのに適した親水性ポリマーは、容易に水に溶解可能であり、小胞形成脂質に共有的に付着することができ、in vivoで認容性を示し、毒性効果をもたらさないもの(すなわち、生体適合性をもつもの)である。好適なポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも称する)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも称する)、ポリ乳酸−ポリグリコール酸コポリマー、およびポリビニルアルコールを含む。好ましいポリマーは、分子量が約100もしくは120ダルトンから、約5,000もしくは10,000ダルトンまで、より好ましくは、約300ダルトンから約5,000ダルトンまでのものである。特に好ましい態様において、ポリマーは、分子量が約100ダルトンから約5,000ダルトンまで、特により好ましくは、分子量が約300ダルトンから約5,000ダルトンまでのポリエチレングリコールである。特に好ましい態様において、ポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。ポリマーはまた、そこにあるモノマーの数で定義してもよい。本発明の好ましい態様は、少なくとも3つのモノマーからなるポリマー、例えば、3つのモノマーからなるPEGポリマー(約150ダルトン)である。
【0268】
本発明に好適に使用することができる他の親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン(polymethoxazoline)、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、および誘導体かされたセルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0269】
いくつかの態様において、本発明の製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリルエステルおよびメタクリルエステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、およびそれらのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ブチック酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリサッカライド、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、およびブレンド、混合物、またはそれらのコポリマーからなる群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0270】
シクロデキストリン
シクロデキストリンは、6、7もしくは8のグルコースユニットからなる環式オリゴ糖類であり、ギリシア文字α、β、γでそれぞれ示される。6未満のグルコースユニットを持つシクロデキストリンが存在することがわかっていない。そのグルコースユニットは、α−1,4−グルコシド結合によって結合する。糖ユニットのいす形配座の結果、すべての第2ヒドロキシル基(C−2、C−3)は、環の1つの側に位置する。一方、C−6の全ての第1ヒドロキシル基は、他方の側に位置する。その結果、外側の面は親水性であり、シクロデキストリンを水溶性にしている。対照的に、シクロデキストリンの凹部は疎水性である。それらは、原子C−3およびC−5の水素、およびエーテル様酸素によって裏打ちされているからである。これらのマトリクスは、種々の比較的疎水性の化合物、例えば、17βエストラジオールなどのステロイド化合物とともに複合体を形成する(例えば、van Uden et al. Plant Cell Tiss. Org. Cult.
38:1-3-113 (1994)参照)。その複合体形成は、Van der Waals相互作用および水素結合形成によって行われる。シクロデキストリンの化学的性質を概観するには、Wenz, Agnew. Chem. Int. Ed. Engl., 33:803-822 (1994)を参照されたい。
【0271】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的特性は、置換の種類および程度に強く依存する。例えば、それらの水への溶解性は、不溶性(例えば、トリアセチル−ベータ−シクロデキストリン)から、147%溶解性(w/v)(G−2−ベータ−シクロデキストリン)の範囲にある。さらに、それらは、多くの有機溶媒に可溶性がある。シクロデキストリンの特性によって、溶解性を増加もしくは減少させることによって、種々の製剤成分の溶解性をコントロールすることができる。
【0272】
多くのシクロデキストリンおよびそれらの調製方法が記載されている。例えば、Parmeter (I)ら(米国特許第3,453,259号)およびGrameraら(米国特許第3,459,731号)は、電気的に中立なシクロデキストリンを記載している。他の誘導体としては、カチオン性の特徴を有するシクロデキストリン [Parmeter(II)、米国特許第3,453,257号]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号)、およびアニオン性の特徴を持つシクロデキストリン[Parmeter(III)、米国特許第3,426,011号]がある。アニオン性の特徴を持つシクロデキストリン誘導体の中で、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸、チオホスフィン酸、およびスルホン酸が親シクロデキストリンにぶら下がっている[Parmeter (III)、前掲文献参照]。さらに、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体がStellaらによって記載されている(米国特許第5,134,127号)。
【0273】
リポソームは、水溶性内側コンパートメントを包含する少なくとも1つの脂質二重膜からなる。リポソームは、膜のタイプおよび膜の大きさによって直腸付けることができる。小単ラメラ小胞(SUV)は、単一の膜をもち、典型的には、0.02μm乃至0.05μmの直径を持つ;大単ラメラ小胞(LUV)は、典型的には、0.05μmより大きな直径を持つ。オリゴマー大小胞およびマルチラメラ小胞は、多数の、通常同心の膜層を持ち、典型的には、0.1μmより大きな直径を持つ。大きな小胞に含まれる複数の同心でない膜を持つリポソームは、多胞体小胞と呼ばれる。
【0274】
本発明のある局面は、本発明の化合物を含有するリポソームを含む製剤であって、該リポソーム膜の輸送能力が増加したリポソームを提供するように製剤されているリポソームに関する。別法として、あるいは、追加的に、本発明の化合物は、リポソームのリポソーム二重層内または上に吸収される。本発明の化合物は、脂質界面活性剤を持つ凝集物で、リポソームの内側スペースに存在してもよい。これらの場合、リポソーム膜は、破壊的な活性剤−界面活性剤凝集物の破壊的作用に抵抗するよう製剤される。
【0275】
本発明のある態様によれば、リポソームの脂質二重層は、ポリエチレングリコール(PEG)によって誘導体化された脂質を含有し、PEG鎖は、脂質二重層の内側層からリポソームによってカプセル化された内側スペースに延び、脂質二重層から周囲の環境に延びるようになる。
【0276】
本発明のリポソーム内に含有される活性剤は、可溶性形状である。界面活性剤の凝集物および活性剤(例えば、該活性剤を含有するエマルジョンまたはミセル)は、本発明のリポソームの内側のスペースに捕捉される。界面活性剤は、活性剤を分散させ、活性剤を溶解させる機能を果たし、それは、限定されないが、鎖長が変化する(例えば、約C14〜C20)生体適合性リソホスファチジルコリン(LPC)を含む好適な脂肪族、シクロ脂肪族または芳香族界面活性剤から選択することができる。それらは、ミセル/膜融合を阻害するように機能するので、ポリマーを界面活性剤分子に添加することによって、界面活性剤のCMCが減少し、ミセル形成を助けるので、PEG−脂質などのポリマー−誘導体化脂質を用いてミセル形成することができる。マイクロモル範囲のCMCを持つ界面活性剤が好ましい。より高いCMC界面活性剤を用いて、本発明のリポソーム中にミセルを調製してもよい。しかしながら、ミセル界面活性剤モノマーは、リポソーム二重層の安定性に影響を及ぼしうる。そして、所望の安定性を有するリポソームを設計する際のファクターとなりうる。
【0277】
本発明のリポソームは、当業者に公知のあらゆる技術によって調製することができる。例えば、米国特許第4,235,871号;PCT国際公開第96/14057号; New RRC、Liposomes: A practical approach, IRL Press,
Oxford (1990), pages 33-104; Lasic DD, Liposomes from physics to
applications, Elsevier Science Publishers BV, Amsterdam, 1993を参照されたい。
【0278】
例えば、本発明のリポソームは、親水性ポリマーによって誘導体化された脂質を、予め形成しておいたリポソーム中に拡散させることによって、例えば、予め形成されているリポソームを、脂質グラフトポリマーからなるミセルに曝露することによって、望ましくはリポソーム中に誘導体化された脂質の最終的なモル濃度に対応する脂質濃度で調製してもよい。親水性ポリマーを含有するリポソームは、当該技術分野において公知の、均質化、脂質−フィールド水和、または押し出し技術によって、形成することができる。
【0279】
別の製剤手順の例では、まず活性剤を超音波処理によって、疎水性分子を容易に安定化させるリソホスファチジルコリン中、または他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト脂質)中で拡散させる。次いで得られた活性剤のミセル懸濁液を用いて、好適なモルパーセントのポリマーグラフト脂質またはコレステロールを含有する乾燥脂質サンプルを再水和する。次いで、抽出技法を用いて、当該技術において知られているように脂質および活性剤懸濁液をリポソームに形成し、カプセル化されていない溶液から標準的なカラム分離によって、リポソームを分離して得る。
【0280】
本発明のある局面において、リポソームは、選択された大きさの範囲内においてほぼ均質な大きさになるように調製される。サイズに基づく効果的な分類方法としては、リポソームの水溶性懸濁液を、選択された孔径の一連のポリカーボネート膜を介して押し出しすることを含む。膜の孔径は、膜から抽出することによって製造される、ほぼ最大サイズのリポソームに対応する。例えば、米国特許第4,737,323号(1988年4月12日)を参照されたい。
【0281】
放出改質剤
本発明の製剤の放出特性は、カプセル化する材料、カプセル化された薬物の濃度、および放出改質剤の存在に依存する。例えば、胃のようなpHの低いところでのみ放出する、または、腸のようなpHの高いところでのみ放出する、pH感受性コーティングを用いて、pH依存性となるように操作することができる。腸溶コーティングを用いて、胃を通過するまで、放出が起こらないように阻止することができる。多数のコーティグまたは異なる材料中にカプセル化されたシアンアミドの混合物を用いて、胃で最初の放出を起こし、その後、腸で放出を起こすようにすることができる。放出はまた、カプセルからの拡散による水分の取り込みおよび放出を増加させ得る塩または孔形成剤を入れることによって操作することもできる。薬物の溶解性を改質する添加剤を用いて、放出速度を制御することもできる。マトリクスの分解またはマトリクスからの放出を促進する薬剤を組み込むこともできる。それらは、薬物に添加することができるし、別個の相(すなわち、粒子)として添加することができるし、または、化合物によっては、ポリマー相に共溶解することもできる。いずれの場合も、その量は、0.1%乃至30%(w/wポリマー)とすべきである。分解促進剤の種類としては、硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどの無機塩、クエン酸、安息香酸、およびアスコルビン酸などの有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛などの無機塩基、ならびに硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどの有機塩基、Tween(登録商標)やPluronic(登録商標)などの界面活性剤がある。マトリクスを微小構造にする孔形成剤(すなわち、無機塩や糖類などの水溶性化合物)を粒子として添加する。その範囲は、1%乃至30%(w/wポリマー)とすべきである。
【0282】
取り込みは、粒子の腸における滞留時間を変えることによって、操作することができる。これは、例えば、粒子をコーティングすることによって、または、カプセル化材料として粘膜吸着性ポリマーを選択することによって、達成することができる。その例としては、キトサン、セルロース、および特にポリアクリレート(本明細書において用いられているところのポリアクリレートは、シアノアクリレートやメタクリレートといった、アクリレート基や改質されたアクリレート基を含むポリマーを言う)などの、カルボキシル基を含まない多くのポリマーが挙げられる。
【0283】
実施例
本発明について、一般的に説明したが、以下の実施例を参照することによってより容易に理解することができよう。実施例は、本発明のいくつかの局面および態様を説明の目的のためだけに記載したものであって、本発明を限定することを意図していない。
【0284】
実施例1
【化69】

【0285】
A. (−)−6−アミノ−2−ヒドロキシヘキサン酸[Chem. Pharm. Bull.
1976, 24, 621]
亜硝酸ナトリウム(25.9g、0.36mole)の水溶液(100ml)を、L−リジン水和物(19.0g、0.097mole)の10%硫酸(250mL)攪拌溶液中に、45〜50℃で、2時間かけて徐々に添加した。添加完了後、該溶液を25℃で、3時間攪拌した。反応過程で形成された硝酸を分解するため、該溶液に尿素を添加し、水溶液をイオン交換カラム(Amberlite IR-120, H+形状、200ml)上に注いだ。カラムを水でよく洗浄した後、溶出物がニンヒドリン試験に対して陰性となるまで、それを水酸化アンモニウムで溶出させた。別個に、結合したフラクションを蒸発させたところ、黄色のオイル7.5グラムが得られた。
【0286】
【化70】

【0287】
B.(S)−6−[[(フェニルメトキシ)カルボニル]アミノ]−2−ヒドロキシヘキサン酸
Aからのアミノヒドロキシ酸(7.5g、51.0mmole)の1N NaOH溶液(50ml)を0℃(氷浴)で、濃縮塩酸を用いてpH10に調整し、ベンジルクロロ炭酸塩(8.40ml、95%、55.9mmole)(各部:lml)を15分間隔で処理した。反応中、pHを1N NaOH溶液を添加することによって、pH9.8〜10.2に調整した。添加が完了し、pHが安定したとき、該混合物をpH10で、0℃で、さらに45分間撹拌し、次いで、一部ずつ洗浄した。該水溶液を、濃縮塩酸を用いてpH1に酸性化し、EtOAc(2x)で抽出した。EtOAc抽出物を塩水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させて、4グラムの生成物を得た。
【0288】
C.(S)−6−[[(フェニルメトキシ)カルボニル]アミノ]−2−ヒドロキシヘキサン酸、メチルエステル
Bからの粗ヒドロキシ酸(4.0g、14.2mm)および乾燥DMF(15ml)中のヨードメタン(0.97ml、15.6mmole、1.1eq)をKCO(2.55g、18.5mmole、1.3eq)で処理した。明黄色の懸濁液を、室温で4時間攪拌した。該混合物を水で希釈し、EtOAc(2x)で抽出した。結合した有機抽出物を水(2x)、飽和NaHCOおよび塩水で洗浄し、その後、NaSO無水物で乾燥させ、蒸発させて、3g(80%)のメチルエステルを、粘性の蒼黄色のオイルとして得た。TLC(1:1)EtOAc/ヘキサン、Rf=0.5。
【0289】
【化71】

【0290】
D.(S)−メチル−6−[(フェニルメトキシ)カルボニル]アミノ]−2−トリフリルオキサヘキサノエート(oxyhexanoate)
CからのCBZヒドロキシエステルの溶液(3.0g、10mmol)およびピリジン(0.71g、11mmol)のメチレンクロリド(300mL)溶液を、0℃でトリフリック(triflic)無水物(3.1g、11mmol)のメチレンクロリド(30mL)溶液で1時間処理した。ピリジニウムトリフラート塩を濾過によって除去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、トリフラート(1.2g、31%)を得た。ジクロロメタン/メタノール(97:3)中TLC:Rf0.65。
【0291】
【化72】

【0292】
E.保護されたDOTAアナログ
10mLの乾燥THF中シクレン(50mg、0.29mmol)を、ヘキサン中1.6Mのn−ブチルリチウム(0.8mL、1.3mmol)を用いて0℃で窒素の存在下で処理した。次いで、反応混合物を室温で5分間攪拌した。次いで、フラスコをドライアイス/アセトン浴に浸漬し、(S)−メチル−6−[(フェニルメトキシ)カルボニル]アミノ]−2−トリフリルオキシヘキサノエート(0.68g、1.74mmol)のTHF(5mL)溶液とHMPA(1mL)を、シリンジを介して添加した。反応混合物を室温に到達させ、そこで、1時間攪拌した。反応混合物を50mLのメチレンクロリドで希釈し、10mLの水で洗浄し、乾燥させた。真空中で溶媒を除去し、生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、メチレンクロリド/メタノール、90:10)で精製した。
【0293】
【化73】

【0294】
F.DOTAアナログ
保護されたDOTAアナログを、トリフルオル酢酸(10mL)中で、25℃で2時間撹拌し、過剰のトリフルオル酢酸を窒素流で吹き飛ばした。粗オイルをエーテルで洗浄して、DOTAアナログを得た。
【0295】
実施例2
【化74】

【0296】
A.2,3,5,6−テトラフルオロフェニルトリフルオロアセテート(TFP−OTFA)
公知の処理[Nucleic Acids Res
1993, 21,145]によって、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(55.2g、0.33mol)、トリフルオロ酢酸無水物(60mL、0.42mol)および三ふっ化ほう素エーテラート(0.5mL)の混合物を16時間還流させた。トリフルオロ酢酸無水物とトリフルオル酢酸を、大気圧下で蒸留によって除去した。トリフルオロ酢酸無水物の画分(bp40℃)を0.5mLの三ふっ化ほう素エーテラートとともに反応混合物に戻し、その混合物を24時間還流させた。この処置を2回繰り返して、反応を完了させた。大気圧での蒸留後、所望の生成物を62℃/45mm(45℃/18mm)で、無色の液体として回収した。収率:81.3(93%);d=1.52g/mL;IR(CHCI)3010、1815、1525、1485、1235、t180、および955cm−l
【0297】
B.ビオチンテトラフルオロフェニルエステルの合成
ビオチンのTEPエステルの調製を、Wilbur[Bioconj. Chem 1997、7、692]に記載のとおり行った。ビオチン(1.0g、4.1mmol)を20mLのDMF(70℃)中にアルゴン雰囲気で溶解した。該溶液に、25℃で、1mL(8mmol)のトリエチルアミンを添加し、次いで、1.7(6.1mmol)の2,3,5,6−テトラフルオロフェニルトリフルオロアセテートを添加した。反応物を室温で、30分間撹拌し、溶媒を真空下で除去した。生成物を10mLのエーテルに倍散し、濾過した。単離した生成物を真空乾燥させ、1.3(80%)のビオチンTFPエステルを無色の固体として得た:mp:185−187°C;H NMR(DMSO−d6、0)1.4−1.8(m、6H)、2.5(m、IH)、2.6−2.9(m、3H)、3.1(m、IH)、4.2(m、IH)、6.4(d、2H)、7.9(m、1H);IR(KBr、cm−l)3250、2915、1790、1710、1520,1480、1090。
【0298】
【化75】

【0299】
C.3−(ビオチンアミド)酪酸
調製は、Wilbur[Bioconj.
Chem 1997、7、692]に記載のとおり行った。20mLのDMFに溶解した0.13g(1.3mmol)の3−アミノ酪酸をアルゴン雰囲気下で、0.4mL(2.5mmol)のトリエチルアミンに添加し、次いで、0.5g(1.3mmol)のビオチンテトラフルオロフェニルエステルを添加した。反応物を25℃で24時間撹拌し、真空下で溶媒を除去した。残留物をアセトニトリルで倍散し、濾過した。単離した固体を真空乾燥させ、0.5g(98%)の生成物を無色の固体として得た。mp161−163℃。H NMR(DMSO−d6):O7.6(m、lH)、6.2(d、J=11.2Hz、2H)、3.9−4.2(m、3H)、2.6(m、2H)、2.35(d、J=12.6Hz、lH)、1.7−2.1(m、4H)、0.7−1.5(m、10H)。
【0300】
D.3−(ビオチンアミド)ブチレートテトラフルオロフェニルエステル
アルゴン雰囲気で10mLのDMF中に溶解した3−(ビオチンアミド)酪酸(1.0、3.1mmol)を1.0(3.65mmol)のTFP−OTFAに添加し、次いで、0.1mLのトリエチルアミンを添加した。反応混合物を25℃で、1時間撹拌し、真空下で溶媒を除去した。残留物をCHCl中に抽出した(4x20mL)。結合したCHCl抽出物を、水溶性NaHCO(2x10mL)および水(2x10mL)を用いて洗浄した。CHCl溶液を無水NaS0上で乾燥させ、溶媒を真空下で除去した。生成物を乾燥させ、1.1g(80%)の無色の固体を得た。mp137−139℃。lH NMR(DMSO−d6):d7.7(m、2H)、6.2(d、J=13.2Hz、2H)、3.9−4.2(m、3H)、2.5−2.7(m、4H)、2.35(d、J=12.6Hz、1H)、1.85(t、J=7.0Hz、2H)、0.7−1.5(m、10H)。
【0301】
実施例3
【化76】

【0302】
ビオチン−DOTA
窒素雰囲気で20mLのDMFに溶解した0.5g(0.65mmol)のDOTA−アミンアナログの酸を1mLのトリエチルアミンに添加し、次いで、2.4g(12.76mmol)の3−(ビオチンアミド)ブチレートテトラフルオロフェニルエステルを添加した。反応物を25℃で24時間撹拌し、溶媒を真空下で除去した。残留物をアセトニトリルで倍散し、濾過した。単離した生成物を高真空下で乾燥させた。生成物を逆相HPLCで精製した。
【0303】
実施例4
【化77】

【0304】
Gd−ビオチン−DOTA
ガドリニウム(Gd)のキレート化を行った。ビオチン−DOTAをグリシン/HCl緩衝液(50mM、pH3.5)中のGdClとともに80℃で3時間インキュベートした。結合体を逆相HPLCで精製した。
【0305】
実施例5
【化78】

【0306】
A.6−(N−フタルイミド)ヘキサン酸
無水フタル酸(56.4g、381mmol)、6−アミノカプリン酸(50g、381mmol)およびトリエチルアミン(54ml)をトルエン(200mL)中に含んだ混合物を、Dean-Starkトラップの付いた500mLフラスコ中で1時間還流させた。該混合物を一晩室温で放置した。形成された析出物を濾過し、ヘキサンで洗浄し、次いで、1Nの塩酸で洗浄したところ、51g(50%)の6−(N−フタルイミド)ヘキサン酸が得られた;mp=110−112℃。
【0307】
【化79】

【0308】
B.イソプロピル2−ブロモ−6−(N−フタルイミド)ヘキサノエート
6−(N−フタルイミド)ヘキサン酸(10g、37.4mmol)、四塩化炭素(20mL)および塩化チオニル(11.4ml、112.3mmol)の混合物を、1時間還流させた。該混合物を室温まで冷却し、四塩化炭素(20mL)、NBS(8g、45mmol)および48%HBR(2滴)を添加した。該混合物をさらに2時間還流させた。室温まで冷却した後、該混合物にイソプロパノール(60ml)を添加し、25℃で30分間撹拌を続けた。回転蒸発により揮発物を除去し、酢酸エチル/ヘキサン(10:90)を用いた、シリカゲル上でのクロマトグラフィーによりオイルを得た。収率:8.7g(60%);H NMR(CDCl):δ(ppm)1.19(d、3H)、1.35(m、2H)、1.68(m、4H)、2.25(dd、2H)、4.9(m、1H)、7.8(m、2H)、7.85(m、2H)。
【0309】
【化80】

【0310】
C.テトライソプロピル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ[2−6−(N−フタルイミド)−ヘキサノエート
シクレン(150mg、0.87mmol)、イソプロピル2−ブロモ−6−(N−フタルイミド)ヘキサノエート(2g、5.2mmol)、および炭酸カリウム(720mg、5.2mmol)のDMF(3mL)溶液を150℃で16時間加熱した。混合物をメチレンクロリド(20mL)で希釈し、水(3X50mL)で洗浄し、乾燥させた(NaSO)。溶媒を回転蒸発により除去し、得られたオイルをメタノール/メチレンクロリド(15:85)を用いた、シリカゲルクロマトグラフィーにかけた。収率:0.34g(30%);H NMR(CDCl):δ(ppm)1−4(m、80H)、4.8−5.1(m、4H)、7.5−7.9(m、16H)。
【0311】
実施例6
【化81】

【0312】
A.ビオチンテトラフルオロフェニルエステル
ビオチン(1g、4mmol)のDMF溶液(20mL)を完全に溶解するまで、70℃で加熱した。該溶液を室温に冷却し、トリエチルアミン(1mL)を添加し、次いで、2,3,5,6−テトラフルオロフェニルトリフルオロアセテート(2g、8mmol)を添加した。反応物を25℃で30分撹拌し、溶媒を真空下で除去した。生成物をエーテル(20mL)中で倍散し、濾過し、乾燥させて、1.0g(63%)を得た;mp184−186℃;H NMR(DMSO−d):δ(ppm)1.4−1.8(m、6H)、2.5(m、1H)、2.6−2.9(m、34H)、3.1(m、1H)、4.2(m、6H)、6.4(d、2H)、7.9(m、1H)。
【0313】
【化82】

【0314】
B.テトライソプロピル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ[2−6−(ビオチンアミド)−ヘキサノエート
テトライソプロピル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ[2−6−(N−フタルイミド)ヘキサノエート(100mg、0.076mmol)およびヒドラジンヒドラート(20μL、0.38mmol)のメタノール(3mL)溶液を1時間還流させた。揮発物質を回転蒸発により除去し、得られたオイルをメチレンクロリド(20mL)中に溶解し、濾過により固体を除去した。溶媒を蒸発させた後、DMF(10mL)中に溶解しているオイルをトリエチルアミン(1mL)およびビオチンテトラフルオロフェニルエステル(0.26g、0.61mmol)で除去した。混合物を16時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、メタノール/NaOH溶液を添加することによって、塩基性にした(pH9)。溶媒を除去し、オイルをシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけた(メタノール/メチレンクロリド(10/90)。77.5mg(60%)の生成物を得た;mp=;H NMR(CDCl):δ(ppm)1.4−1.8(m、32H)、2.3(t、16H)、2.7−3.2(m、12H)、4.3(dd、4H)、4.5(dd、4H)、5.2(s,4 H)、5.5(s、4H)。
【0315】
【化83】

【0316】
C.1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ[2−6−(ビオチンアミド)]ヘキサン酸テトラ塩酸塩
テトライソプロピル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ[2−6−(ビオチンアミド)ヘキサノエート(50mg)の6N塩酸溶液(5mL)を4時間還流させる。溶媒を真空下で除去し、生成物を得る。
【0317】
実施例7
Tc−99m放射標識1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ[2−6−(ビオチンアミド)]ヘキサン酸の生体分布
以下の図は、炎症筋肉と正常筋肉の比率を示したものであり、Tc−99m放射標識ポリビオチンを、大腿部に炎症のある5匹のラット(平均)に注射した1時間後に得られたものである。生体分布の24時間前に、テルペンチンをラット大腿部に注射することによって炎症を起こしておいた。試薬の残りは肝臓と腎臓に集中していた。
【表1】

【0318】
引用による援用
本明細書において引用した全ての特許および文献は、引用によりここに援用している。
【0319】
均等物
当業者なら、ルーチンの実験法を用いるだけで、ここに記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識または確認することになろう。そのような均等物は、以下の請求項に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0320】
【図1】図1は、DOTAの合成を示す図である。
【図2】図2は、ビオチン−DOTAの合成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで表される化合物。
【化1】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【請求項2】
nが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが2であり、Rが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが任意に置換された−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Xは、下記式のいずれかである、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項6】
nは2であり、Rは水素であり、Yは−C(O)−であり、Xは下記式から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項7】
mは1である、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
mは2である、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
各アルキルは、少なくとも1つのカルボン酸で任意に置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
下記式IIで表される、化合物。
【化4】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【請求項11】
Mは遷移金属である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Mは、In−111、Tc−99m、I−123、I−125、F−18、Ga−67、Ga−68、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67、およびCu−64からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
Mは、Gd3+、Mn2+、Fe3+、Cr3+、ジスプロシウム、ホルミウム、およびエルビウムからなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
Mは、Gd3+、Mn2+、Fe3+、およびCr3+からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
nは2である、請求項10に記載の化合物。
【請求項16】
nは2であり、Rは水素であり、Yは−C(O)−である、請求項10に記載の化合物。
【請求項17】
Xは−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−である、請求項10に記載の化合物。
【請求項18】
Xは、下記式のいずれかである、請求項10に記載の化合物。
【化5】

【請求項19】
nは2であり、Rは水素であり、Yは−C(O)−であり、MはGa3+であり、Xは、下記式で表される、請求項10に記載の化合物。
【化6】

【請求項20】
nは2であり、Rは水素であり、Yは−C(O)−であり、MはTc−99mであり、Xは、下記式で表される、請求項10に記載の化合物。
【化7】

【請求項21】
mは1である、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
mは2である、請求項17に記載の化合物。
【請求項23】
下記式IIIで表される化合物。
【化8】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品である。
【請求項24】
nが2であり、Rが水素である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
Xが任意に置換された−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−である、請求項23に記載の化合物。
【請求項26】
nは2であり、Rは水素であり、Yは−C(O)−であり、Xは下記式から選択される、請求項23に記載の化合物。
【化9】

【請求項27】
mは1である、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
mは2である、請求項25に記載の化合物。
【請求項29】
下記式IVで表される化合物。
【化10】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
Mは、金属原子であり;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品である。
【請求項30】
Mは、In−111、Tc−99m、I−123、I−125、F−18、Ga−67、Ga−68、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67、およびCu−64からなる群から選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
Mは、Gd3+、Mn2+、Fe3+、Cr3+、ジスプロシウム、ホルミウム、およびエルビウムからなる群から選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
炎症、感染症、および癌からなる群から選択される疾患または状態を治療するための方法であって、該方法は、式I、II、III、またはIVで表される化合物の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法。
但し、式Iで表される化合物は、下記式で表され、
【化11】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し、
式IIで表される化合物は、下記式で表され、
【化12】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し、
式IIIで表される化合物は、下記式で表され、
【化13】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品であり、
式IVで表される化合物は、下記式で表され、
【化14】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
Mは、金属原子であり;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品である。
【請求項33】
感染症を治療するための方法であって、前記感染症は、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ペプトコッカス(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、桿菌(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、乳酸桿菌(LactobacilIus)、リステリア(Listeria)、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)からなる群から選択される細菌によって引き起こされる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
感染症を治療するための方法であって、前記感染症は、疱疹イルス、ポリオウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、トガウイルス群、サイトメガロウィルス(CMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ピコルナウイルス、ライノウイルス、ヒトパピローマウイルス(Human papillona viruses )、および肝炎ウイルスからなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
炎症性の状態を治療するための方法であって、前記炎症性疾患または炎症性の反応は、皮膚障害であり、前記皮膚障害は、アトピー性皮膚炎、乾癬、神経性炎症、皮膚の光損傷、細胞カルチノーマ、角化上皮症、および角質化の障害であり;または、炎症性の肺疾患もしくは反応であり、前記炎症性の肺疾患もしくは反応は、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、および成人呼吸障害症候群からなる群から選択され;または、炎症性の筋骨格疾患もしくは反応であり、前記炎症性の筋骨格疾患は、乾癬性関節炎、骨関節症、および骨粗鬆症からなる群から選択されるメンバーであり;または、炎症性の消化器系および泌尿生殖器系の疾患もしくは反応であり、前記炎症性の消化器系および泌尿生殖器系の疾患もしくは反応は、炎症性腸疾患、全腸炎、胃炎、膣炎、および間質性膀胱炎からなる群から選択されるメンバーであり;または、前記炎症は、自己免疫疾患もしくは反応によって起こり、前記自己免疫疾患は、多発性硬化症、II型糖尿病、狼瘡、およびリウマチ性関節炎からなる群から選択されるメンバーであり;または、前記炎症は、移植治療によって引き起こされる、炎症からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
癌を治療するための方法であって、前記癌は、患者の頭部、頚部、鼻腔、副鼻腔、上咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺、パラガングリオン、膵臓、胃、皮膚、食道、肝臓、および胆管ツリー(biliary tree)、骨、腸、結腸、直腸、卵巣、前立腺、肺、乳房、中枢神経系、または脳に位置する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
ヒトまたは非ヒト動物の体の磁気共鳴画像を作成する方法であって、 前記方法は、磁気共鳴画像法を必要とする被験体の体に、下記式IIまたはIVで表される化合物を投与するステップ、および磁気共鳴画像を作成するステップを含み、式IIで表される化合物は、下記式で表され、
【化15】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し、そして、
式IVで表される化合物は、下記式で表され、
【化16】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
Mは、金属原子であり;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品である、方法。
【請求項38】
前記被験体はヒトである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
式IIによって表される前記化合物において、Mは、Gd3+、Mn2+、Fe3+、およびCr3+からなる群から選択され、式IIによって表される化合物は、下記式で表される、請求項37に記載の方法。
【化17】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【請求項40】
式IIによって表される前記化合物において、Mは、Gd3+であり、式IIによって表される化合物は、下記式で表される、請求項37に記載の方法。
【化18】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【請求項41】
式IIによって表される前記化合物において、Mは、In−111、Tc−99m、I−123、I−125、F−18、Ga−67、Ga−68、I−131、Re−186、Re−188、Y−90、Bi−212、At−211、Sr−89、Ho−166、Sm−153、Cu−67、およびCu−64からなる群から選択され、式IIによって表される化合物は、下記式で表される、請求項37に記載の方法。
【化19】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【請求項42】
式IIによって表される前記化合物において、Mは、Tc−99mであり、式IIによって表される化合物は、下記式で表される、請求項37に記載の方法。
【化20】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表す。
【請求項43】
式I、II、III、またはIVで表される化合物、および薬学的に許容される添加剤を含む製剤であって、式Iで表される化合物は、下記式で表され、
【化21】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し、
式IIで表される化合物は、下記式で表され、
【化22】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Mは、金属原子であり;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し、
式IIIで表される化合物は、下記式で表され、
【化23】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗菌類、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品であり、
式IVで表される化合物は、下記式で表され、
【化24】

式中、Rは、それぞれ個別に、Hまたはアルキルを表し;
Yは、それぞれ個別に、−C(O)−または−S(O)−を表し;
Mは、金属原子であり;
nは、それぞれ個別に、1、2、3、または4を表し;
Aは、任意に置換された共有結合、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)からなる群から選択され;
Xは、それぞれ個別に、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、または−[(アルキル−NRC(O))−アルキル]−(但し、mは、1、2、3、または4を表し、Rは、Hまたはアルキルを表す)を表し;
Zは、−CHCOH、抗生物質、抗ウイルス物質、抗腫瘍物質、消炎性物質、抗感染症薬、抗真菌薬、放射性核種、抗ホルモン物質、重金属錯体、オリゴヌクレオチド、アンチセンス化学療法剤ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、アミノグリコシド、抗体およびフラグメント、脂質構築物、非特異性(非抗体)タンパク質、ホウ素含有化合物、光力学的物質、エネジイン、または転写ベースの医薬品である、製剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−507522(P2007−507522A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534097(P2006−534097)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032153
【国際公開番号】WO2005/032598
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(501386533)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】